複数の物件資料を並べて、利回りの数字だけを見比べていませんか。
- 表面利回り8%と表面利回り6%、どちらが得なのか判断できない
- 資料には「満室想定」と書いてあるが、それが本当かどうか確かめる方法がない
- 「今すぐ決めないと他の人に取られます」と言われると、判断が急かされてしまう
ところが、表面利回りだけで比較すると、実際は手残りがほとんど出ない物件を高い利回りだと勘違いして選んでしまうことがあります。
私は西宮の物件を検討していたとき、資料の表面利回りは悪くない数字でした。そのまま営業の声を信じていたら、危うく利回りを見誤るところでした。
自分で経費と空室損失を計算し直すと、満室でも手残りは月4〜5万円しかないと分かり、購入を見送っています。鳥取に住みながら会社員を続けて13年、いまは3棟38室・借入2億円超です。
この記事では、物件資料をどう読み、買っていいかどうかをどんな手順で判定するかを解説します。
読み終える頃には、業者から資料を渡された瞬間に、検討に値する物件かどうかを自分で判定できる状態になっているはずです。
結論からお伝えします。物件の良し悪しではなく、「その値段で成り立つか」だけを見るのが判定の全てです。
表面利回りの高さは、判断材料のごく一部でしかありません。
結論:物件の良し悪しではなく、「その値段で成り立つか」だけを見ます
順番を間違える人が多いので、先に結論から言うと、次の3つを確認すれば十分です。
- 資料の家賃が本当か:現況家賃なのか、まだ埋まっていない部屋の想定家賃なのか
- 手残りがいくらか:表面利回りではなく、経費と空室を引いた後の数字
- 悲観シナリオでも耐えるか:空室と金利が同時に悪化しても資金繰りが止まらないか
答えは、この3つだけです。
この3つを自分で計算し直すだけで、営業トークに流される場面は大きく減ります。一つずつ、順に確認します。
まず利回りからです。
順番さえ守れば、誰でも同じように、その物件が買っていいものかどうかを判定できるようになります。
慣れるまでは、少し時間がかかるものです。それでも、一度この順番を身につけてしまえば、次からはずっと楽になります。
物件資料のどこを見るか|最初に確認する5項目
資料を受け取ったら、写真より先にレントロール(家賃一覧表)を見てください。確認する項目は5つです。
- 現況家賃と想定家賃:空室になっている部屋が、「想定」の数字だけで埋められていないかを確認します
- 入居時期:複数の部屋が同じ時期に入居していないかを見ます。時期が偏っていると、同時に退去されるリスクがあります
- 築年数と構造:木造・鉄骨・RCのどれかによって、融資期間と修繕の周期が変わってきます
- 接道状況:道路にどれだけ接しているかで、再建築ができるかどうかが決まり、将来の売却にも関わってきます
- 修繕履歴:直近の大規模修繕がいつだったかを見て、次はいつ来そうかを見込んでおきます
たったこれだけです。
この中で最も見落とされやすいのが、現況家賃と想定家賃の区別です。空室のままの部屋に「このエリアの相場なら」という想定家賃を当てはめて、満室時の利回りとして提示している資料は珍しくありません。
油断は禁物です。
現況の数字を見ます。
資料の中に「想定」という文字が入っていないか、目を凝らして探してみてください。それだけで、うっかり見落とすことをかなり防げます。
たった一文字です。
ちょっとした手間ですが、この一手間を惜しむかどうかで、後々の結果がまるで違ってくるものです。

資料の家賃欄に「想定」と小さく書いてあるだけで、全部埋まっている前提の利回りが載っていることがあります。空室の部屋がいくらで、いつから埋まっていないかを、必ず自分で確認してください。
実際に資料を読むときは、家賃の欄をひとつずつ指でなぞりながら、埋まっている部屋と空いている部屋を分けて見ていくと分かりやすくなります。焦って全体の数字だけを見てしまうと、この違いに気づかないまま話が進んでしまいます。
👉 レントロールの見方・満室偽装の見破り方をもっと詳しく見る
変えられる欠点か、変えられない欠点か
資料に気になる点があっても、それだけで見送るのは早計です。欠点を「変えられるもの」と「変えられないもの」に分けて考えてください。
- 変えられるもの:設備の古さ、内装、外壁の色、家賃設定。お金と時間で対処できます
- 変えられないもの:立地、方角、駅からの距離、周辺の人口動態。あとから手を出せません
特に注意したいのが、入居者が特定の工場や大学に偏っているケースです。
その施設が移転・閉鎖すれば、需要そのものが消えます。賃貸需要の理由を、資料の中で確認しておいてください。

内装が古いだけなら、リフォームで直せます。直せない欠点かどうかを、先に見極めてください。変えられない欠点は、値段を下げてもらう交渉材料にするか、見送るかの二択です。
表面利回りが隠しているもの
表面利回りは「年間家賃収入 ÷ 物件価格」で計算します。この式には、経費も空室も税金も入っていません。
- 表面利回り:年間家賃 ÷ 物件価格。物件同士をざっくり比較するときの目安になります
- 実質利回り:(年間家賃-年間経費) ÷ (物件価格+購入諸費用)。経費まで含めた収益性が分かります
- 自己資金利回り:(年間家賃-経費-ローン返済) ÷ 自己資金。自分が出したお金に対して、どれだけ手残りがあるかが分かります
たとえば表面利回りが8%と表示されている物件でも、経費を引いた実質利回りでは5%まで下がることがあります。数字だけをそのまま受け取っていると、この差になかなか気づけません。
数字は鵜呑みにしないでください。
同じ物件でも、どの利回りで語るかによって数字の印象はまったく変わります。正直、営業資料に載っているのは、たいてい一番大きく見える表面利回りです。
そこに気づけるかどうかです。
比較するときは、必ず同じ種類の利回りで揃えてください。表面利回り8%の物件Aと、実質利回り6%の物件Bを並べても、数字だけでは有利不利を判断できません。
👉 利回りの目安と実質CFシミュレーションをもっと詳しく見る
手元にいくら残るのかを計算する
比較の軸を実質利回りに揃えたら、次は手残りの金額そのものを計算します。手順は5ステップです。
- ① 満室想定の年間家賃を出す
- ② そこから空室損失(相場では5〜10%)を引く
- ③ 管理費・修繕積立・固定資産税などの運営経費を引く
- ④ ローンの年間返済額を引く
- ⑤ 残った額から所得税・住民税を引く
順番を守ってください。
この5ステップのうち、業者の収支シミュレーションで抜けやすいのは②の空室損失と⑤の税金です。
この2つを足さずに計算すると、実際より手残りが多く見えてしまいます。
慣れないうちは、電卓とメモを手元に置いて、一つずつ順番に引き算していくのがおすすめです。暗算で済ませようとすると、途中でどこまで引いたか分からなくなってしまいます。
急がば回れです。
西宮の物件を検討したときも、業者の資料には②と⑤が入っていませんでした。自分で入れ直して計算すると、満室想定でも手残りは月4〜5万円という数字になっています。
悲観・標準・楽観の3つで見る
満室想定の手残りが出たら、次はその数字を悪条件でも崩れないか確認します。空室率・金利・修繕費の3つを、悲観・標準・楽観の3水準で振ってください。
| シナリオ | 空室率 | 金利 |
|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 現在の金利のまま |
| 標準 | 10% | 現在の金利+0.5% |
| 悲観 | 20% | 現在の金利+1.5% |
見るべきなのは、悲観シナリオでも赤字にならないかどうかだけです。楽観シナリオの数字がどれだけ良くても、悲観シナリオで資金繰りが止まるなら、その物件は今の自己資金では買わないという判断になります。
数字を並べて眺めるだけでなく、実際に赤字になった月をイメージしてみてください。通帳の残高がどこまで減るかを思い浮かべると、自分がどこまで耐えられるかがはっきりしてきます。
耐えられるかどうかです。
融資はどこで借りるのか|銀行選びの全体像
計算が終わったら、融資先の見当をつけます。金融機関にはタイプがあり、得意な属性が異なります。
- メガバンク:年収が高く、大企業に勤めていて、自己資金を厚く用意できる人と相性が良いです
- 地方銀行・信用金庫:物件のあるエリアに地縁があったり、地元での取引実績がある人が通りやすくなります
- 日本政策金融公庫:小規模から始めたい人や、自己資金がまだ薄い人でも相談しやすい先です
- ノンバンク・アパートローン専門:属性に少し不安があっても、高めの金利を許容できるなら選択肢に入ります
金利の低さだけで金融機関を選ばないでください。審査が通らなければ、そもそも物件を買えません。窓口で相性を確かめてから、自分の属性でどこが通りやすいかを把握しておくほうが現実的です。
銀行ごとに得意な相手が違うだけで、良い銀行・悪い銀行という単純な話ではありません。まずは自分に合いそうな窓口をいくつか訪ねてみるところから始めてください。
焦って選ばないでください。
現地で見るべきこと
資料と数字で「検討に値する」と判断できたら、現地を確認します。見るのは建物と周辺、この2か所です。
- 建物の外壁・屋根・共用部の傷み具合(資料の修繕履歴と食い違っていないか)
- 周辺に競合となる賃貸物件がどれだけあり、空室の看板が出ていないか
- スーパー・コンビニ・駅までの実際の距離と、歩いたときの体感
- 写真では分からない、日当たりや騒音などのその場でしか分からない要素
資料の数字が良くても、現地で違和感があれば、その違和感のほうを優先してください。数字は過去の実績、現地の状況はこれからの実態に近い情報です。
違和感を無視しないでください。
面倒に感じても、足を運ぶ手間を惜しまないでください。たった一度その場に立つだけで、資料だけでは分からなかったことに気づけることがあります。
現地に行ってください。
実際にその場所を歩いてみると、資料の写真だけでは伝わらない匂いや音に気づくことがあります。こうした感覚は、どれだけ数字を眺めても、あらわれてはきません。
平日と休日で違います。
体で確かめてください。
契約までの流れと、どこまで戻れるか
現地確認まで終えたら、購入の手続きに入ります。ここから先は、工程が進むごとに引き返しにくくなっていくと考えてください。
- 買付証明書の提出:まだ引き返せます。他の物件と並行して検討中の意思表示に近いものです
- 売買契約:引き返しにくくなります。手付金が発生し、解約には違約金が伴います
- 決済・引き渡し:もう引き返せません。所有権が移り、この時点で判断が確定します
西宮の物件は、買付証明書を出す一歩手前まで検討を進めていました。手元の電卓で数字を叩き直し、満室でも手残りが月4〜5万円しかないと気づいています。
契約でも決済でもなく、まだ買付すら出していない段階だったので、断ることに違約金も何も発生しませんでした。撤退の判断が一番軽く済む段階です。
この経験から、自分の中で「買付を出すまでは、いつでも降りていい」というルールにしています。数字が崩れた時点で降りるのに、遠慮も気まずさも要りません。それだけの差です。
迷ったときに引き返せるのは、買付証明書を出す前までです。契約以降は違約金や信頼関係が絡み、判断のやり直しが難しくなります。
だからこそ、買付を出す前の段階で、これまで見てきた確認をすべて終わらせておいてください。出してしまってから迷うのと、出す前に迷うのとでは、心にかかる重さがまるで違います。
今のうちに確認してください。
急いでいるときほど、この順番を飛ばしたくなるものです。そこをぐっとこらえられるかどうかで、後から振り返ったときの安心感が変わってきます。
焦りは禁物です。
次に読む記事
物件を判定する手順が分かったら、次は買った後の話です。良い物件を選べても、運営が伴わなければ満室は維持できません。管理会社との付き合い方から確認していきます。

コメント