「タキ所長に、まずはお電話させていただきました」
こんな一言を言われたことはありませんか?
「あなただけに、特別にご案内しています」「この物件、まだ市場に出ていないんです」「今だけの限定情報です」——不動産会社からの電話やメールで、こうした言葉を受け取った高収入サラリーマンは少なくないはずです。
正直に言います。私はこの言葉を何度も聞いてきました。不動産投資を始めてから13年、38部屋を購入してきた経験の中で、業者から「特別に」と言われた物件が本当に優良物件だったことは、ほぼ一度もありませんでした。
なぜか。答えはシンプルです。
本当に良い物件は、「わざわざあなたに電話」してまで売らなくていいからです。
この記事では、不動産投資における「非公開物件」「特別案内」というトークの裏側にある構造的な嘘を、業界の仕組みから論理的に解体します。読み終わる頃には、業者の甘い言葉に対して「冷静に疑う目」が自然と身につくはずです。
この記事でわかること
- 「非公開物件」が生まれる本当の理由(売主視点・業者視点)
- レインズと「両手引き」の仕組みと、業者が非公開にしたい裏の動機
- 業者が「特別感」を演出して買主の判断力を奪う3つの手口
- 本当に優良な物件情報が回ってくる「唯一の条件」
「あなただけに特別」は、なぜ売れ残りのサインなのか

売主の論理を知れば、「非公開」の嘘は一瞬で見抜ける
まず、売主(物件を売りたい側)の立場で考えてみてください。
あなたが所有する収益物件を売りたいとき、どうすれば一番高く、早く売れるでしょうか。答えは明白です。できるだけ多くの人の目に触れさせることです。
売主にとって、情報をできる限り広く拡散させた方が問い合わせも増え、高値で早く売りやすくなります。 この原理から考えれば、売主が自ら「非公開にしてほしい」と望む合理的な理由は、ほとんど存在しません。
では、なぜ「非公開物件」という存在が生まれるのでしょうか。
最初から情報を広く公開してしまうと「皆知ってる出回り物件=値段が高いか、どこかに問題がある物件」というレッテルを貼られかねないため、「非公開」にするケースが多いのです。
つまり、業者側の都合で「非公開」というラベルが貼られていることがほとんどです。
「非公開物件」と呼ばれる物件の正体——ネット上の証言から
不動産投資に関するコミュニティや口コミサイトでは、「非公開物件として紹介されたが、後から調べたらずっと売れ残っていた物件だった」という証言が数多く見られます。
物件をインターネット上で公開すると、なかなか売却が決まらずに長期間募集が出ている「出回り物件」になる可能性があります。出回り物件は多くの不動産投資家や不動産業者の目につき、「売れ残っている物件」というマイナスなイメージを持たれてしまいます。出回り物件と思われたらますます売却しにくくなってしまうため、出回り物件になるのを防ぐため非公開物件にするケースがあるのです。
これが現実です。業者にとって「非公開」は、物件の希少価値を演出するためのマーケティング上のラベルに過ぎない場合が多いのです。
漫画『正直不動産』(NHKでもドラマ化された話題作)には、こんな台詞が登場します。
「『未公開』『当社だけ』『あなただけ』と、希少性を演出され、他と比較しづらい状況を作り、割高な物件を押し付けようって魂胆だってことです」
フィクションでありながら、この台詞は不動産業界の実態を鋭く突いています。「特別感」の演出は、買主の比較検討の機会を奪い、判断力を低下させるための仕掛けなのです。
レインズの仕組みを知れば「非公開」の嘘が丸わかりになる

レインズとは何か?——業者だけが見られる物件情報の全国データベース
「レインズ(REINS)」という言葉をご存知でしょうか。
レインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する、不動産業者専用のオンライン物件情報システムです。全国の宅建業者のみがアクセスでき、一般の方は見ることができません。
重要なのは、専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んだ場合、業者にはレインズへの登録義務があるという点です。専任媒介なら7日以内、専属専任媒介なら5日以内に登録しなければ、宅建業法違反となります。
つまり、原則として売りに出されている物件は、すべてレインズを通じて全国の業者に公開されるべきなのです。
REINSとは全国の不動産会社が物件情報を共有するデータベースのことで、一般の方はアクセスできません。不動産売却の依頼を受けた不動産会社は、ほとんどの場合で物件情報をREINSに登録する義務が発生します。
この仕組みが徹底されているならば、「あなただけに非公開でご案内」という営業トークは、構造的に成立しないことがわかります。
業者が「両手引き」で手数料を倍取りする仕組み
では、なぜ業者は物件をレインズに登録したがらないケースがあるのでしょうか。その答えが「両手引き(両手仲介)」です。
不動産の売買取引において、仲介手数料は以下の二通りがあります。
| 取引形態 | 手数料の受け取り方 |
|---|---|
| 片手引き(片手仲介) | 売主か買主のどちらか一方からのみ受領 |
| 両手引き(両手仲介) | 売主・買主の双方から受領(手数料が倍になる) |
日本の宅地建物取引業法では、売主・買主の双方から仲介手数料を受け取ることを禁止していないため(業界では両手取引といいます)、不動産会社は通常売上が2倍になる両手取引を優先します。
具体的な数字で見てみましょう。たとえば5,000万円の収益物件を売買した場合、仲介手数料の上限は「5,000万円×3%+6万円=156万円」です。
- 片手引きなら: 156万円(売主側 or 買主側のどちらか一方から)
- 両手引きなら: 312万円(売主・買主の両方から)
同じ1件の取引で、手数料が2倍になる。これが業者が両手引きに執着する根本的な理由です。
そして、この両手引きを実現するために業者が行う行為が「囲い込み」です。
「囲い込み」とは、売却を依頼された物件情報を他社に開示しなかったり、他社から買主紹介の問い合わせを意図的に断ったりすることで、自社だけで売主・買主双方をまとめて両手取引に持ち込もうとする行為です。長年、日本の不動産業界に蔓延してきた悪しき慣習とも言われています。
実は、この囲い込みは決して一部の悪徳業者だけの問題ではありません。大手不動産仲介会社33社のうち、両手取引比率が40%超えの会社が15社もあるというデータが存在しています。「大手だから安心」とは言い切れない実態がここにあります。
業者が「特別感」を演出して買主の判断力を奪う3つの手口

ここまでで、「非公開物件」という言葉が構造的に成立しにくいことはご理解いただけたと思います。では、業者はなぜこの言葉を使い続けるのでしょうか。
答えは一つです。「特別感」は、買主の冷静な判断力を奪うための最も効果的な道具だからです。
手口①「タキ所長にまず最初にお電話しました」——VIP感による警戒心の解除
私自身が何度も受けた営業電話の中で、特に巧みだと感じたのがこのパターンです。
「いつもお世話になっております。以前からタキ所長のことを特別にご案内できる方だと思っておりました。今回、まず最初にお電話させていただきました」
この一言には、複数の心理的トリックが仕込まれています。まず、「あなたは特別な存在だ」というVIP感の付与。次に、「最初に電話した=他にも候補者がいる」という希少性の演出。そして「所長」という肩書きへの敬意を示すことで、相手に「悪い気がしない」という感情を植え付けます。
しかし、冷静に考えてください。業者があなたに「最初に電話した」として、それはリスト上の何番目でしょうか。あなたが「特別」なのではなく、あなたの年収と信用属性が「融資を引きやすいターゲット」として特別なだけです。
不動産投資詐欺のターゲットになりやすい人の特徴は、ずばり「融資を受けやすい人」です。公務員や上場企業の社員、医師や弁護士など、いわゆる「高属性」とよばれる人たちは狙われやすいと言えます。
「特別扱い」の正体は、あなたの属性への下心です。
手口②「今日中に決めないと他の方に」——FOMO(見逃し恐怖)による即断の強制
「この物件はすぐに売れてしまいます」「限定○名様だけの特別オファーです」といった言葉で、顧客に「今決めなければ後悔する」と感じさせる手口が横行しています。これはFOMO(Fear Of Missing Out=見逃し恐怖症)と呼ばれる心理を利用した手法です。
さらに悪質なケースでは、「上司の許可が必要ですが…」と電話演出で”特別な条件”を装い、その場で契約書や重要事項説明書を出され、流れるように署名を求められるという手順が踏まれます。
「今日中に決めてください」と言われた瞬間、それは良い物件ではない証拠です。本当に優良な物件なら、買主が「今すぐ買いたい」と自ら動くからです。
手口③ 比較検討の機会を奪い、情報を「点」にする
非公開物件の最大の問題は、比較対象がないことです。
公開物件であれば、楽待・健美家・アットホームなどのポータルサイトで類似物件と利回り・価格・立地を比較できます。しかし「特別にご案内」された物件は、その定義上、他と比べることができません。
「限定感」や「特別感」を演出し、冷静に考える時間を与えないまま契約を迫るのが、詐欺的営業の典型的な手口です。判断力を鈍らせることで、「とにかくサインさせる」ことを最優先にしているのが特徴です。
「比較できない状況を作ること」が、業者の最大の目的であることを忘れないでください。
こうした営業の実態をより深く知り、「そもそも電話が来た段階でどう対応すべきか」を学びたい方には、ぜひこちらの記事も合わせてお読みください。しつこい勧誘電話を完全に断ち切るための実践的な言葉と、業者の心理を逆手に取った撃退法を、私の経験を踏まえて具体的に解説しています。
【内部リンク挿入:ID11「不動産投資 営業電話 断り方」】
本当に優良な物件情報が回ってくる「唯一の条件」とは

ここまで読んで、こんな疑問を持った方もいるかもしれません。
「では、非公開物件は100%嘘なのか?本当に良い情報が先に届くことはないのか?」
正直に言います。あります。ただし、条件が一つだけあります。
「関係性のない特別」は存在しない——13年で得た結論
私が13年間、38部屋の売買を経験して辿り着いた答えはシンプルです。
「先方との関係性がすべて」
これに尽きます。
特別な関係性がない中で、特別な提案はしてもらえません。業者にとって「この人に先に話を持っていこう」と思う相手というのは、過去に何度も売買をともにし、お互いの判断基準・スピード感・交渉スタイルを知り尽くした相手です。
つまり、本当の意味での「非公開案件の優先紹介」が起こる条件とは、以下の3段階を経た関係の積み重ねの上にしか存在しないのです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①複数の実績 | 一度ではなく、複数回の売買取引を経る |
| ②Win-Winの実績 | 業者側も「この人と取引すると良い結果になる」と感じている |
| ③相互の信頼 | 業者があなたの判断基準・資金力・スピードを把握している |
逆に言えば、あなたとの取引実績がゼロの業者が「あなただけに特別に」と言う場合、それは100%マーケティングトークです。
業者に刺さる「切り返しの質問」——冷静さを取り戻す5つのフレーズ
では、実際にこうした営業を受けたとき、どう対応すればいいか。私が有効だと感じる「切り返しの質問」をお伝えします。
① 「この物件、レインズには登録されていますか?」 登録されていれば「非公開」ではありません。登録されていなければ、なぜかを問い詰めましょう。囲い込みの可能性が高いです。
② 「売主がレインズ登録を希望していない理由を教えていただけますか?」 この質問に明確に答えられない業者は、論理的に説明できる根拠を持っていません。
③ 「類似物件と比較できる資料はありますか?」 比較資料を出せない=この物件だけで判断させたい、という意図の表れです。
④ 「今日でなくても検討できますか?」 「今日中に」と言われたら、即座にこの質問を返してください。本当に良い物件なら、1〜2日の検討期間を与えても売れません。
⑤ 「御社と私の過去の取引実績を教えていただけますか?」 関係性のない業者からの「特別案内」は、論理的に成立しません。この質問で相手の主張の矛盾を浮き彫りにできます。
非公開物件トークの背景にある「ワンルーム投資の甘い罠」の全体像を把握したい方は、親記事でその構造をより詳しく解説しています。月10万円のキャッシュフローを目指すサラリーマンが、なぜワンルーム投資で儲からないのか——その根本的な理由から学び直したい方は、ぜひこちらをお読みください。
【内部リンク挿入:まとめ記事3-1「不動産投資 ワンルーム 儲からない」】
非公開物件に関するよくある質問(Q&A)

- Q非公開物件は、法律的に問題はないのですか?
- A
非公開物件そのものは、法律違反ではありません。ただし、専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んでいるにもかかわらず、レインズへの登録を意図的に遅らせたり、他社からの問い合わせを断ったりする「囲い込み」行為は、宅建業法上の義務違反にあたる可能性があります。
2024年には国土交通省が「囲い込み」に関するガイドラインを強化し、業者への指導を厳しくする方向性が示されました。しかし現実には、証拠をつかむことが難しく、買主が泣き寝入りするケースが後を絶ちません。
「非公開だから違法」ではなく、「なぜ非公開なのか」の理由を業者に明確に説明させることが、あなたが自分を守るための第一歩です。
- Q「未公開物件専門」を謳う不動産会社は信頼できますか?
- A
「未公開物件専門」という看板は、それ自体が警戒すべきサインです。
本来、優良な収益物件の情報は、長年の信頼関係のある業者から自然と回ってくるものです。「未公開専門」を前面に出して集客している会社は、「未公開」という言葉の希少価値を集客ツールとして使っているに過ぎない可能性が高いと考えてください。
もちろんすべてがそうとは言い切れませんが、少なくとも「未公開=優良」という等号は絶対に成立しません。そのような会社と接触する際は、必ずレインズ登録状況の確認、類似物件との比較、売主がなぜ非公開を望むかの理由説明を求めてください。
- Qでは、本当に良い物件情報を得るにはどうすればいいのですか?
- A
答えは一つ。「情報が来る側の人間になること」ではなく、「業者が先に話したくなる関係性を、時間をかけて構築すること」です。
具体的には、①まず公開物件で1棟目の実績をつくる、②その業者とWin-Winの関係を丁寧に積み重ねる、③あなたの判断スピードと資金力を業者に信頼してもらう——この3ステップを経て初めて、「この人に先に話を持っていこう」という状況が生まれます。
近道はありません。「特別な情報」は、「特別な関係性」の上にしか存在しないのです。
まとめ:「特別な儲け話」は、サラリーマンには絶対に回ってこない

この記事でお伝えしてきたことを、最後に整理します。
■ この記事の結論
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ①「非公開」の正体 | 売れ残り・問題物件・囲い込みのいずれかである可能性が高い |
| ②業者の動機 | 両手引きによる手数料の最大化が根本的な目的 |
| ③「特別感」の正体 | 買主の比較検討と判断力を奪うためのマーケティングトーク |
| ④本物の情報が来る条件 | 複数の取引実績とWin-Winの信頼関係の積み重ねのみ |
不動産投資の世界には、「特別」「限定」「未公開」という言葉が溢れています。しかし13年間、2億円の負債を抱えながら38部屋の物件と向き合ってきた私が断言できることがあります。
本当に良い物件は、「あなたを特別扱いする言葉」ではなく、「数字と論理」で語られます。感情を揺さぶる言葉が多ければ多いほど、その物件から距離を置いてください。
不動産投資は「事業」です。事業である以上、仕入れ(物件購入)の判断は、感情ではなく数字と構造で行わなければなりません。業者の言葉に乗せられて買った物件は、必ず後悔の種になります。
冷静な目と、正しい知識だけが、あなたを守ります。
📌 次のステップとして、ぜひお読みください
「非公開物件」の罠を知った今、次に身につけるべきは「しつこい営業電話を完全に断ち切るスキル」です。良い業者との関係を築くためにも、まず不要な業者を遠ざけることが先決です。
「検討します」「上司に相談します」では絶対に止まらない業者に対し、法的根拠を持って完全撃退する具体的なフレーズと対応フローを、以下の記事で公開しています。
【内部リンク挿入:ID11「不動産投資 営業電話 断り方」】
また、そもそも「なぜワンルーム投資では月10万円のキャッシュフローが実現できないのか」という根本的な疑問をお持ちの方は、まず親記事でその全体構造を把握することをお勧めします。
【内部リンク挿入:まとめ記事3-1「不動産投資 ワンルーム 儲からない」】
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