「自分の年収だと、いくらまで借りられるんだろう」——不動産投資を考え始めると、誰もが一度はこの疑問を持ちます。
先に結論を言います。目安は年収の7〜10倍。ただしこれは”借りられる上限”の話であって、借りていい額とは、まったく別物です。
なぜ言い切れるか。私は年収750万円のサラリーマン時代に、2億円(年収の約27倍)を借りたからです。そして、その結末まで含めて正直に書きます。

年収の7倍とか10倍とか、ネットにはいろいろ書いてあります。ですが私は27倍を借りました。「いくら借りられるか」を追いかけると、人はここまで行けます。問題はその先です。
不動産投資の融資は年収の何倍まで借りられるか【結論】

一般的な目安は年収の7〜10倍です。これは金融機関が「年間返済額が年収の30〜40%以内に収まるか」を審査基準の一つにしていることから逆算された数字です。
年収別に整理すると、こうなります。
| 年収 | 融資目安(7倍) | 融資目安(10倍) | 現実的な上限ゾーン |
|---|---|---|---|
| 700万円 | 4,900万円 | 7,000万円 | 5,000〜6,500万円 |
| 800万円 | 5,600万円 | 8,000万円 | 6,000〜7,500万円 |
| 1,000万円 | 7,000万円 | 1億円 | 8,000万〜9,500万円 |
| 1,200万円 | 8,400万円 | 1億2,000万円 | 1億〜1億1,500万円 |
ただし倍率を決めるのは年収そのものではなく、物件の収益性と自己資金です。同じ年収でも、利回りの高い物件と自己資金を厚く入れれば枠は伸び、逆なら縮みます。年収は”入口の目安”にすぎません。
銀行が審査で本当に見ている3つの属性

銀行が見ているのは年収だけではありません。大きく3つです。
- 属性:勤務先(上場企業・公務員は強い)・勤続年数・年収の安定性
- 自己資金:物件価格に対してどれだけ頭金を入れられるか。フルローンは審査が厳しくなる
- 物件の担保力:その物件自体が、貸した金を回収できる価値を持つか
金融機関ごとに、求める年収の目安も違います。
| 金融機関 | 年収目安 | その他の主要審査条件 |
|---|---|---|
| メガバンク・都市銀行 | 800万円以上 | 勤続5年超・上場企業・自己資金20%以上 |
| 地方銀行 | 500〜700万円 | 物件所在エリアの業者経由・勤続3年超 |
| 信用金庫 | 400〜600万円 | エリア密着・担当者との関係構築が重要 |
| 日本政策金融公庫 | 300万円〜(実績なしでも可) | 事業計画書の質・自己資金が審査のカギ |
| ノンバンク(オリックス等) | 400万円〜 | 物件の収益性・エリア重視。金利高め |
メガバンクは年収800万以上・自己資金厚めを求める一方、地方銀行や信販系は物件次第で柔軟なこともあります。どの銀行に当たるかで結果は大きく変わるのです。
銀行の選び方・当たる順番は、こちらで詳しく書いています。

【実録】私は年収750万で2億借りた——そして融資が止まった

ここからが本題です。私は年収750万円のサラリーマン時代、松本・甲府・仙台の一棟3棟(35室)を中心に、合計約2億円の融資を受けました。年収比で約27倍。教科書的な「7〜10倍」を大きく超えています。
なぜそんなに借りられたのか。サラリーマンには「与信」という信用があり、それなりの収入があると1〜2億円まで借金ができてしまうからです。物件の担保と給与の安定を掛け合わせれば、銀行は貸してくれる。
借り終えた瞬間、融資は止まった
そして2億円を借り終えた後、私はそれ以上の融資が通らなくなりました。与信を使い切ったのです。ここで大事なことに気づきます。「借りられる額」には天井があり、そこに達すると次の一手が打てなくなる。

借りられることを「誇らしい」と感じていた時期がありました。ですが、与信を使い切るのは、次のカードを全部捨てるのと同じです。若い頃の自分に言ってやりたいことです。
「かぼちゃの馬車」で、与信の怖さを思い知った
私がスルガ銀行で借りていた時期、ちょうど「かぼちゃの馬車」事件が起きました。スルガから「あなたの物件は問題ないか」と調査の連絡が来たんです。結果的に大きな問題にはなりませんでしたが、あのとき痛感しました。大きな借金は、自分の判断だけでなく、銀行や市場の都合でいつでも揺らぐ——与信を目一杯使うとは、その揺れをまともに受ける状態を意味します。
実際、松本と甲府でキャッシュフローが回らなくなり、スルガに頭を下げて元金返済を1年間止めてもらうところまで追い込まれました。2億借りた男の、これが現実です。
金利が上がると、あなたの融資枠と返済はどうなるか

借入額が大きいほど、金利上昇の影響も比例して大きくなります。同じ物件でも金利が1%上がるだけで、返済額はこれだけ変わります。
| 条件 | 月返済額 | 年間返済額 | 35年総返済額 |
|---|---|---|---|
| 金利1.5% | 約30.6万円 | 約367万円 | 約1億2,845万円 |
| 金利2.5%(+1%) | 約35.6万円 | 約427万円 | 約1億4,931万円 |
| 差額 | 約5万円/月 | 約60万円/年 | 約2,086万円 |
2億円を借りていれば、金利1%の上昇はそのまま重くのしかかります。借入可能額いっぱいまで借りるほど、金利上昇に対して脆くなる——ここは融資枠を考えるときに必ずセットで意識してください。
金利上昇のシミュレーションと備えは、こちらで詳しく解説しています。

「借りられる額」でなく「借りていい額」で考える

ここまで読んで分かる通り、「いくら借りられるか」を追いかけるのは危険です。追いかけた先に待っているのは、与信の枯渇と、金利上昇への脆さです。
私は一度、兵庫県西宮市の新築アパート(8,000万円・6室・フルローン)に手を出しかけました。借りようと思えば借りられた。でも2部屋空いたら赤字になる収支に気づいて、本能的に危険を感じて踏みとどまりました。今でも、あそこで契約していたらと思うと冷や汗が出ます。

不動産投資は「買ったときにほぼ勝負がついている」ものです。借りられるかどうかではありません。その借金を返せる物件かどうか、です。融資枠は「使い切る」ものではなく「余らせる」ものです。
借りていい額の考え方は、こう整理できます。
- 返済比率:年間返済額が満室家賃の50%以内に収まるか(空室・修繕の余地を残す)
- 与信を使い切らない:次の物件・不測の事態に備えて、借入枠を意図的に余らせる
- 金利+1%でも耐えられるか:上昇局面でCFがマイナスにならない借入額にとどめる
借りられる額は、式のどの項も動かさない
ここまでの話を、不動産投資の真実で書いた式に接続しておきます。家賃+売値-経費>買値。「年収の何倍まで借りられるか」は銀行の与信判断であって、この式のどの項にも影響しません。借りられる額が大きいことは、買値が適正であることを何ひとつ保証しないのです。
与信が大きい人ほど、この罠にかかりやすくなります。「借りられるから」という理由だけで買値の妥当性の検算を省略すると、式が成立しない物件にまで手が届いてしまうのです。借りられる額を確認するのは入口の作業にすぎず、買ってよいかどうかは、そこから独立して検算する必要があります。
よくある質問

- Q年収750万円のサラリーマンですが、不動産投資で2億円の融資を受けることは本当に可能ですか?
- A
可能です。ただし、条件があります。
年収に対する融資額の倍率だけで審査が決まるわけではありません。実際に私自身、年収750万円の時点で一棟3棟(35室)を中心に、合計2億円の融資を実現しています。
その前提となったのは、①各物件のDSCRが銀行の基準を満たしていたこと、②自己資金を適切に用意していたこと、③既存の借入を事前に整理していたことの3点です。
「年収の何倍か」という問いよりも、「物件の収益性が銀行の審査基準を満たしているか」という問いのほうが、融資の可否を左右します。年収はあくまで審査の入口に過ぎません。
- Q住宅ローンを抱えていても、不動産投資ローンは組めますか?
- A
組めますが、融資枠が圧縮されることを前提に計画を立ててください。
住宅ローンの残債は、不動産投資ローンの審査において「既存の負債」として計上されます。年収1,000万円でも、住宅ローンが4,000万円残っていれば、その分だけ投資用の融資枠は小さくなります。
ネット上でも「住宅ローンを抱えたまま投資用融資に挑んだら、希望額の半分しか出なかった」という声は少なくありません。
対策としては、①住宅ローンの残債状況を正確に把握した上で融資計画を立てること、②住宅ローンに強い金融機関と投資用ローンを扱う金融機関を分けて考えることが有効です。いずれにせよ、事前に自分のバランスシートを作成し、借入余力を正確に把握してから動くことが大前提です。
- Q「融資が通った=良い買い物をした」ではないと聞きました。どういう意味ですか?
- A
融資が通ることと、その物件が事業として成立することは、まったく別の話です。
銀行が融資を承認するのは、「返済される可能性が高い」と判断したからです。しかしそれは、あなたのキャッシュフローが豊かになることを保証するものではありません。
私が物件選定で最重視するのは、「費用対効果が本当にある物件かどうか」です。具体的には、市場調査・空室シミュレーション・修繕費の見込みを踏まえた想定実質利回りと、年間のキャッシュフローが確実に回るかどうかを徹底的に検証します。
融資が通った瞬間に安堵して、この検証を怠る——これが、サラリーマン大家が陥る最も典型的な失敗パターンです。融資承認はゴールではなく、事業としての本当の判断はその先にあります。
なお、将来マイホームを買う予定があるなら、投資ローンで与信枠を使い切る前に順序を設計しておく必要があるのです。詳しくは不動産投資ローンと住宅ローンの両立条件|与信を守る実務で解説しています。
当ブログのすべての記事は、「良い物件は存在しない。良い買値が存在するだけだ」という一本の式を土台にしています。この記事もその応用です。
まとめ——年収の何倍かより「返せるか」で決める

- 融資の目安は年収の7〜10倍。ただし決めるのは年収でなく物件の収益性と自己資金
- 「借りられる額」と「借りていい額」は別物。私は27倍を借りて与信を使い切り、融資が止まった
- 借入枠は使い切らず余らせる。金利+1%でも耐えられる額にとどめる
- 買ったときに勝負はついている。借金を返せる物件かどうかが全て

年収の何倍まで借りられるか——その問いは、実はあまり大事ではありません。大事なのは「その借金を、その物件が返してくれるか」。私は27倍を借りて、それを骨身で学びました。
元の記事に戻る
融資条件の詳細を踏まえて、銀行選びの基本に戻って確認しましょう。


コメント