「金利が上がっても、うちは大丈夫」——その根拠はどこにありますか?
不動産投資の説明会やセミナーに参加すると、業者は必ず「安心してください」と言います。シミュレーション表には、きれいな数字が並んでいます。毎月のキャッシュフローはプラス。返済比率も問題なし。融資審査も通った。
だから、大丈夫。——本当にそうでしょうか?
私は13年間、仙台・甲府・松本など複数都市に38室を所有し、2億円超の負債を抱えながら遠隔管理を続けてきました。その経験から断言できることがあります。
業者が見せるシミュレーションは、「すべてがうまくいった未来」しか映していません。
金利は現状維持。空室は想定内。修繕は計画通り。そんな都合のいい未来が、現実に続いた試しは一度もありませんでした。
この記事で伝えたいことは、たった一つです。
「最悪のシナリオを数字で検証してから買う」——これができない人は、高リスクの宝くじを買っているのと同じです。 当たれば儲かるかもしれない。でも外れたときの損失は、業者の想定の何倍もあなたを苦しめます。利益は小さく、リスクは大きい。それが検証なき不動産投資の正体です。
この記事では、金利+1%・空室+5%のストレスをかけた場合に、あなたの物件のキャッシュフローがどうなるかを具体的に検証する手順をお伝えします。買う前に必ず読んでください。買ってしまった方も、今すぐ確認してください。
「金利が上がっても大丈夫」は本当か?変動金利の落とし穴

変動金利ローンの実態——「低金利」はいつまで続くのか
不動産投資ローンの多くは変動金利です。私が松本市の物件をスルガ銀行で購入した当時の金利は4.5%でした。現在の低金利環境とは全く異なる水準です。2年後に粘り強く交渉してようやく3.1%まで下げることができましたが、それでも当初の資金計画は大きく狂いました。
重要なのは、「今の金利が永遠に続く」という前提でローンを組むことの危うさです。
日銀の金融政策は変化しつつあります。住宅ローンと異なり、不動産投資ローンは銀行の判断で金利が変更されやすい性質を持っています。「審査が通った=安全」ではなく、「10年後・20年後も返済できるか」が本当の問いです。
金利+1%で月々の返済はいくら増えるか
具体的な数字で考えてみましょう。
【試算例】借入額8,000万円・返済期間25年・変動金利2.0%の場合
| シナリオ | 金利 | 月額返済 | 年間返済 |
|---|---|---|---|
| 現状 | 2.0% | 約338,000円 | 約406万円 |
| +0.5% | 2.5% | 約358,000円 | 約430万円 |
| +1.0% | 3.0% | 約379,000円 | 約455万円 |
| +2.0% | 4.0% | 約422,000円 | 約506万円 |
金利が1%上昇するだけで、年間約49万円の返済増加です。月換算で約4万円。毎月のキャッシュフローが5万円程度の物件であれば、それだけで事実上の赤字転落です。
これが「金利リスク」の現実です。
銀行の融資審査は「今の金利で返せるか」を見ているだけです。将来の金利上昇に耐えられるかは、あなた自身が検証するしかありません。
ストレステストの「正しいやり方」── 金利編

金利+1%シナリオの計算手順
ストレステストは難しくありません。手順は以下の通りです。
Step1:現在の年間返済額を確認する 返済明細書またはローン計算ツールで、現在の月額返済×12を計算します。
Step2:金利を+1%した場合の返済額を試算する ローン計算ツール(無料のものが多数あります)に、現在の残債・残存期間・金利+1%を入力し直します。
Step3:年間収入(満室想定)から年間返済額を引く (月額想定賃料×12ヶ月)−(ストレス後の年間返済額)=年間キャッシュフロー
Step4:空室・管理費・修繕費を差し引く 賃料収入の30〜35%を諸経費として引くのが実務上の目安です(管理費・修繕費・固定資産税・保険料等)。
この最終数字がマイナスになる物件は、金利1%上昇で即座に赤字転落するということです。
銀行の審査基準と「自己防衛ライン」は別物
ここは特に強調したい点です。
銀行は融資審査の際、返済比率(年間返済額÷年間収入)が概ね50%以下であれば融資するケースが多いです。しかしこれはあくまで銀行が「貸せる」と判断する基準であり、あなたの投資が「安全」という意味では一切ありません。
私が定める自己防衛ラインは、金利+1%・空室+5%をかけた後の実質返済比率が45%以内です。これを超える物件は、どれだけ業者の説明が魅力的でも、私は買いません。
なぜなら、想定外の修繕費・空室・金利上昇が重なった瞬間に、「返済できない」という恐怖が現実になるからです。
私はその恐怖を、甲府市の物件で実際に経験しました。その話を次の章でお伝えします。
空室リスクは「想定より必ず悪化する」── 空室編

空室+5%が現実になる瞬間
業者のシミュレーション表には、たいてい「想定空室率5%」と書いてあります。18室の物件であれば、年間を通じて約1室分が空く計算です。一見、保守的に見えます。
しかし現実は違います。
空室は「じわじわ増える」のではなく、「一気に来る」のです。
私が山梨県甲府市で購入した5階建て・18室のマンション。購入価格は8,900万円、表面利回りは10%超。パッと見の数字は申し分なく、正直すぐに飛びつきました。店舗と看板スペースの空室も「1年で決まる」という業者の言葉を信じていました。
購入した翌月、一気に5部屋が退去しました。
18室中5室が同時に空く。空室率は一夜にして27%超です。業者が見せたシミュレーションの「想定空室率5%」は、現実の前に瞬時に意味を失いました。
今となって思うのは、購入タイミングだけ合わせて入居してもらっていたのではないか、ということです。確かめる術も知らず、ただただ焦りながら管理会社に「早く埋めてくれ」と懇願するしかありませんでした。
結果、賃料を4〜5万円から2万円台後半まで引き下げて、ようやく翌年の2〜3月に埋まりました。これだけで利回りは大幅に下落。買った瞬間に、勝負はほぼついていたのです。
稼働率80%・70%・60%それぞれのキャッシュフロー崩壊シミュレーション
感覚ではなく、数字で確認しましょう。
【試算例】18室・平均賃料4万円・年間満室収入864万円・年間返済額480万円の物件
| 稼働率 | 空室数 | 年間賃料収入 | 諸経費(30%) | 年間CF |
|---|---|---|---|---|
| 100%(満室) | 0室 | 864万円 | 259万円 | +125万円 |
| 95%(想定空室) | 約1室 | 821万円 | 246万円 | +95万円 |
| 80% | 約4室 | 691万円 | 207万円 | +4万円 |
| 70% | 約5〜6室 | 605万円 | 181万円 | ▲55万円 |
| 60% | 約7室 | 518万円 | 155万円 | ▲117万円 |
稼働率が80%を下回った時点でキャッシュフローはほぼゼロになります。そして70%を割ると、毎月サラリーマンの給与から持ち出しが発生し始めます。
私が甲府で経験した「翌月5室退去」は、稼働率72%への急落です。この状態が数ヶ月続いた時の精神的・財務的ダメージは、シミュレーション表の数字では到底表現できません。
賃料も「下がる」ことを前提に試算せよ
空室リスクには、もう一つの側面があります。空室を埋めるために賃料を下げざるを得ない、というリスクです。
甲府の物件では、当初4〜5万円だった賃料を2万円台後半まで引き下げました。満室になっても、収入は当初想定の約60〜65%にしかなりません。
業者のシミュレーションは「現在の賃料が維持される」前提で作られています。しかし築年数が経つほど、地域の需給が変わるほど、賃料は下押しされます。
正しいストレステストは「空室率+5%」だけでなく、「賃料▲10%」も同時にかけるべきです。
最悪のシナリオを重ねる「複合ストレステスト」

金利+1% × 空室+5% の同時発生で何が起きるか
金利上昇と空室悪化は、別々に起きるとは限りません。景気が悪化した局面では、金利の上昇と入居需要の低下が同時に発生することも十分あり得ます。
先ほどの試算例(18室・平均賃料4万円・借入8,000万円・金利2.0%)で、複合ストレステストをかけてみます。
【複合ストレステスト試算】
| 条件 | 年間収入 | 年間返済 | 諸経費(30%) | 年間CF |
|---|---|---|---|---|
| 現状(満室・金利2.0%) | 864万円 | 406万円 | 259万円 | +199万円 |
| 空室+5%のみ | 821万円 | 406万円 | 246万円 | +169万円 |
| 金利+1%のみ | 864万円 | 455万円 | 259万円 | +150万円 |
| 複合(空室+5% × 金利+1%) | 821万円 | 455万円 | 246万円 | +120万円 |
| 複合+賃料▲10% | 739万円 | 455万円 | 222万円 | +62万円 |
| 複合+賃料▲10%+修繕費突発 | 739万円 | 455万円 | 222万円+150万円 | ▲88万円 |
最後の行を見てください。複合ストレスに突発的な修繕費が加わった瞬間、年間88万円の赤字です。月換算で約7万3千円の持ち出し。サラリーマンとしての給与から毎月この金額が吸い込まれ続けます。
これは絵空事ではありません。甲府の物件では水道タンクの全交換に200万円、松本の物件でも同様のトラブルで150万円がかかりました。突発修繕は「もしも」ではなく「いつか必ず」起きます。
キャッシュフローが吹き飛ぶ「崩壊ライン」の定義
私が実体験から導き出した「崩壊ライン」の定義はシンプルです。
複合ストレス後(金利+1%・空室+5%・賃料▲10%)をかけた状態で、年間キャッシュフローが「突発修繕費の最低想定額(物件価格の1〜2%)」を下回る場合、その物件は崩壊ラインを超えている。
物件価格8,000万円なら、突発修繕の最低想定は年間80〜160万円です。複合ストレス後のCFがこれを下回るなら、その物件は修繕が1件起きるたびに赤字に転落するリスクを常に抱えているということです。
この計算を、買う前に必ずやってください。
私が後悔しているのは、物件の「見た目の利回り」に飛びついて、この崩壊ラインを検証しなかったことです。
崩壊ラインを超えた時の対処策
もし現在保有している物件がすでに崩壊ラインに近い状態であれば、選択肢は限られます。
①繰上返済で残債を減らす 返済額そのものを下げることでCFに余裕を生む。ただし手元資金が必要。
②借換・金利交渉でコストを下げる 私はスルガ銀行に粘り強く交渉し、4.5%→3.1%への引き下げに成功しました。簡単ではありませんが、黙っていては何も変わりません。
③元金返済の猶予を銀行に相談する 私が実際に行ったのがこれです。キャッシュフローが限界に達した際、スルガ銀行に正直に状況を説明し、1年間の元金支払い停止という条件を引き出しました。その結果、当時で約100万円のキャッシュを手元に残すことができ、低空飛行ながらも持ちこたえることができました。「銀行に話す=負け」ではありません。正直に、早めに相談することが唯一の選択肢になる局面があります。
④売却による損切り 最も判断が難しく、最も重要な選択肢です。出口戦略を持たずに買った物件は、売ろうとしても買った値段では売れないことがほとんどです。
実際、私は出口戦略を考えずに購入した物件をいくつも抱えており、これが今でも最大の後悔です。
出口を語れない業者からは買わない。これが私の今の鉄則です。どの物件をどのタイミングで売却すべきかの判断基準については、LINEオープンチャットコミュニティで限定公開しています。気になる方はぜひご参加ください。
そして、こうした崩壊ラインの検証を自分で行うためのツールとして、私が実際に使っている収支計算シートの考え方を公開しているのが以下の記事です。数字は業者任せにしてはいけません。自分の手で回してこそ、初めてリスクが見えてきます。
「業者のシミュレーションと自分で計算した数字が全然違った」——そう気づいた時の絶望と、それでも諦めずに計算し直した過程を、以下の記事で詳しく解説しています。
【内部リンク挿入:ID7「不動産投資 収支計算エクセル シミュレーション」】
よくある質問(Q&A)

- Qストレステストは、物件購入前と購入後、どちらのタイミングでやるべきですか?
- A
必ず「購入前」に行ってください。ただし、購入後も定期的に実施することをお勧めします。
購入前のストレステストは「この物件を買っていいかどうか」を判断するためのものです。複合ストレス後のキャッシュフローが崩壊ラインを超えているなら、どれだけ業者の説明が魅力的でも、その物件は見送るべきです。
一方、購入後のストレステストは「今の保有状態が健全かどうか」を確認するためのものです。金利環境や地域の賃貸需給は時間とともに変化します。私は年に一度、保有物件すべてについて複合ストレスをかけた収支を確認するようにしています。
「買ってしまったから今さら計算しても意味がない」は危険な思考停止です。現状を正確に把握することが、次の打ち手(繰上返済・借換・売却)を判断するための第一歩になります。
- Q金利+1%・空室+5%という数字の根拠は何ですか?もっと厳しく見るべきでしょうか?
- A
これは「最低限」のストレスです。物件の立地・築年数・借入条件によっては、さらに厳しい数字で検証すべきケースがあります。
金利+1%は、過去の金利変動の歴史から見ても「十分あり得る上昇幅」として広く使われる水準です。ただし、スルガ銀行など金利水準が高めの投資用ローンを利用している場合は、すでに3〜4%台のケースもあり、さらなる上昇リスクも想定しておく必要があります。
空室+5%については、地方物件・築古物件・競合が多いエリアでは**+10〜15%**で試算することをお勧めします。私の甲府の物件では購入翌月に空室率が27%超になりました。「まさかそこまで」という想定が外れた時に、人は最も追い詰められます。
ストレステストは「これで大丈夫」と安心するためのものではなく、「ここまで悪化したら耐えられない」という限界値を知るためのものです。
- Q業者が作ったシミュレーションと、自分で計算した数字が違います。どちらを信じるべきですか?
- A
迷わず、自分で計算した数字を信じてください。
業者のシミュレーションは、その業者が物件を売りたいという前提で作られています。悪意があるというより、構造的に「売れる数字」になりやすいのです。空室率は楽観的に、修繕費は最小限に、金利は現状維持で——そうした前提が積み重なると、現実とは大きくかけ離れた「希望の数字」が完成します。
私自身、甲府の物件を購入した際、業者が見せた数字を疑わずに飛びつきました。その結果、購入翌月に5室が一気に退去するという現実を突きつけられました。
業者のシミュレーションは「参考」にとどめ、必ず自分で数字を入れ直してください。特に空室率・賃料下落・修繕費・金利変動の4点は、業者の数字ではなく保守的な自己試算で検証することが鉄則です。
自分でシミュレーションを回すための具体的な手順とツールは、以下の記事で詳しく解説しています。
【内部リンク挿入:ID7「不動産投資 収支計算エクセル シミュレーション」】
まとめ:最悪のシナリオを想定して、初めて「事業」と呼べる

この記事でお伝えしたことを、最後に整理します。
① 変動金利の上昇リスクは「いつか来る現実」として数字で検証する 金利+1%で年間返済がいくら増えるかを、必ず自分で計算してください。銀行の融資承認は「あなたの投資が安全」という意味ではありません。
② 空室は「じわじわ来る」のではなく「一気に来る」 私の甲府の物件では購入翌月に5室が同時退去しました。業者の「想定空室率5%」という数字がいかに楽観的かを、稼働率70%・60%のシミュレーションで必ず確認してください。
③ 金利・空室・賃料下落・修繕費を「同時に」かけた複合ストレステストを行う それぞれ単体では耐えられても、重なった瞬間に崩壊する物件は少なくありません。複合ストレス後のCFが突発修繕費の最低想定額を下回るなら、その物件は崩壊ラインを超えています。
④ 崩壊ラインを超えた物件を持ってしまったなら、早めに銀行・管理会社に相談する 黙って抱え込むことが最も危険です。私はスルガ銀行への正直な相談で、1年間の元金支払い停止という猶予を得ました。
最後に、13年のサバイバー大家として、これから物件を買おうとしているあなたに一言だけ言わせてください。
ストレステストをせずに不動産を買うことは、外れたら大きく損をする宝くじを買うようなものです。 利益は小さく、リスクは大きい。当たった人の話だけが表に出て、外れた人の話は表に出ない。でも現実には、外れた人のほうがずっと多い。
私はその「外れた側」の経験を、2億円超の負債と13年の修羅場で積み上げてきました。だからこそ断言できます。買った瞬間に勝負はほぼついているのです。
どうか、シミュレーションを自分の手で回してから、判断してください。
収支シミュレーションを、今すぐ自分で回してみてください
数字は業者に任せてはいけません。自分で入力し、自分で確認する。その習慣が、あなたの投資を守ります。私が実際に使っている収支計算の考え方と、ストレステストの具体的な数字の入れ方は、以下の記事で公開しています。
【内部リンク挿入:ID7「不動産投資 収支計算エクセル シミュレーション」】
融資・金融機関の選び方も、同時に確認してください
ストレステストで物件の安全性を確認したら、次は「どの銀行で・どんな条件で借りるか」が重要になります。銀行選びを間違えると、金利だけで年間数十万円の差が生まれます。サラリーマン投資家が使える金融機関の特徴と選び方は、以下の親記事で体系的にまとめています。
【内部リンク挿入:ID(まとめ記事④-2)「不動産投資 融資 銀行」】
出口戦略の判断基準は、LINEコミュニティで限定公開しています
「この物件、いつ売ればいいのか」——これは不動産投資で最も難しく、最も重要な判断です。どの指標を見て売却を決断するか、私が実際に使っている基準はブログでは書けない部分も含まれます。
LINEオープンチャットコミュニティでは、売却・出口判断の基準をメンバー限定で公開しています。参加は無料です。ストレステストを終えたら、ぜひ次のステップとして出口戦略も一緒に考えましょう。
\ 出口戦略の限定情報はこちら / 【LINEオープンチャット登録バナー挿入】


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