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不動産投資の真実|家賃+売値-経費>買値。この一本の式がすべてを決める

【STEP0】知る

今あなたが検討している物件は、明日売ったらいくらになるでしょうか。

即答できるでしょうか。できないなら、その物件は買うべきではありません。理由は、この記事を最後まで読んでいただければわかります。

先に白状しておきます。私は13年前、この問いに答えられないまま最初の物件を買いました。3棟38室、借入2億円超まで来た今だから言えることですが、当時の私は不動産投資の本質をまるで理解していませんでした。

うまくいった物件もあります。ひどい目に遭った物件もあります。ですが振り返って本当に恐ろしいのは、成功した理由も失敗した理由も、たった一本の同じ式で説明できてしまうことです。

その式を、私は買ってから何年もかけて理解しました。順番が逆だったのです。だからこの記事は、13年前の自分に読ませたい記事として書きます。

不動産投資の真実は、この一本の式に尽きる

家賃収入 + 売却額 - 経費 > 購入額
この不等式が成り立てば成功、成り立たなければ失敗。それだけのことです。

拍子抜けされたでしょうか。ですが、この式ほど残酷に正確なものはありません。そして世の中の不動産投資の話の大半は、この式のどれか一項だけを取り出して、あなたに全体を見せないようにできています。

不動産投資は、本質的には巨額のせどりです。安く仕入れて高く売る。ただ一点だけ、普通のせどりと決定的に違う性質があります。保有している間、家賃という現金を生み続けてくれる。だから売値が買値を下回っても、それまでに受け取った家賃で埋められるなら勝ちになり得ます。この一点が不動産投資を面白くしていると同時に、危険なごまかしの余地も作っています。

式の各項を確認しておきましょう。

  • 家賃収入:保有期間の合計。満室想定ではなく、空室と家賃下落を織り込んだ現実値
  • 売却額:出口。今日の相場ではなく、あなたが売るときの相場
  • 経費:管理費、修繕費、大規模修繕、固定資産税、保険、ローン利息、仲介手数料、売却時の諸費用、そして税金
  • 購入額:物件価格に加えて、仲介手数料、登記費用、不動産取得税など初期費用の全部

この4項のうち、あなたが完全にコントロールできるのは購入額だけです。家賃は市場が決めます。売値も市場が決めます。経費は建物と時間が決めます。買値だけが、あなたの意思で決まります。そして買値だけが、契約した後は一切修正できません。

ここに不動産投資のすべてが凝縮しています。買値が、その後の全部を決めるのです。高く買えば、家賃は返済に消え、経費は積み上がり、売っても損が出るから売れず、身動きが取れなくなります。正しく買えれば、家賃で回り、いつでも逃げられます。

良い物件は存在しません。良い買値が存在するだけです

極端な話をしたほうが早いでしょう。

ボロボロの築古アパートを、1円で買えたとしましょう。屋根は波打ち、外壁は剥がれ、入居者は半分もいません。誰が見ても最悪の物件です。それでも1円です。年に10万円でも家賃が入れば、初年度で10万倍を回収できます。空室のまま朽ちたとしても、更地にして手放せば足は出ません。これは間違いなく最高の物件です。

逆に、駅直結の新築タワーマンションを1兆円で買ったとしましょう。立地は文句なし、設備は最新、入居者が途切れることもありません。誰が見ても最高の物件です。それでも1兆円です。家賃をあと何万年集めても、売却額を足しても、回収する道はありません。これは取り返しのつかない、史上最低の物件です。

物件の質だけを見れば、前者が最悪で後者が最高でした。それでも投資としての評価は、完全に逆転します。評価を反転させたものは何でしょうか。買値だけです。

世の中に、良い物件と悪い物件は存在しません。
良い買値と悪い買値があるだけです。

これに気づくと、営業の言葉の聞こえ方が根本から変わります。「この物件は良いですよ」という説明は、価格を伴わない限り何も言っていません。駅徒歩3分も、入居率99%も、11年連続グッドデザイン賞も、全部が物件の質の話であって、式のどこにも入っていないのです。

そして質の高さは、たいてい高い買値を飲ませるための材料として使われます。立地が良いから高い。設備が最新だから高い。ブランドがあるから高い。どれも事実です。ですが事実であることと、その価格で式が成り立つことは、まったく別の問題です。

だから物件を検討するときは、質問の形を変えてみてください。この物件は良い物件か、ではありません。この価格は、良い買値か、です。

なぜ誰もこの式を教えてくれないのか

陰謀論をやるつもりはありません。もっと単純で、もっと救いのない話をします。この式が成り立つかどうかで報酬が変わる人が、あなたの周りに一人もいないのです。

登場人物報酬が確定する瞬間あなたの式が成立するかどうか
開発・販売会社あなたが契約した時点報酬に無関係
仲介会社売買が成立した時点報酬に無関係
銀行毎月の利息。返済が滞らなければよい報酬に無関係
管理会社毎月の管理料。家賃に対する率報酬に無関係
税理士申告書を作った時点報酬に無関係
あなた売り終わった時。数十年後全額を自分で負う

誰も悪人ではありません。全員が自分の職務を果たしています。ただ、この長い列の中で、買値が間違っていることをあなたに告げて得をする人間が一人もいません。それだけの話です。だから告げられないのです。

13年やって私が学んだのは、業者の善悪を見抜く技術ではありませんでした。誰も自分の代わりに検算してくれないという構造を、腹の底で理解することでした。この構造がわかると、営業トークの聞こえ方が変わります。相手が嘘をついているのではなく、相手には言う理由がないのだと理解できるようになります。

式を隠す3つの言葉

営業の現場で頻繁に登場する3つの言葉があります。どれも嘘ではありません。ですが、どれも式が成り立たない物件を正当化するために使われた瞬間に、嘘になります。

① 節税になります

節税は式の中で、経費と税を扱う二次的な技術です。式そのものを覆す力はありません。

冷静に考えてみてください。損益通算による節税とは、不動産で損失を出し、その損失を給与所得から差し引くことで税金を減らす仕組みです。つまり節税額が大きいほど、それだけ大きく損しているということです。戻ってくる税金は、支払った損失の一部にすぎません。減価償却のように現金支出のない経費で作る節税は正当な技術ですが、それも正しく買えた物件の利益を最大化する道具です。

ここは強調しておきたいところです。節税は、正しく買えた物件の手残りを増やす技術であって、間違って買った物件を正当化する道具ではありません。「毎月2万円の赤字ですが節税になります」という説明を受けたら、それは式が成り立っていないことを税の話で塗り潰そうとしているサインです。

② 生命保険の代わりになります

団体信用生命保険は、実際に価値のある仕組みです。契約者に万一のことがあれば残債が消え、家族に無借金の不動産が残ります。ここに嘘はありません。

ただし、これは保険の話であって投資の話ではありません。保障が目的なら、掛け捨ての収入保障保険のほうが圧倒的に安いのです。浮いた差額を積立投資に回せば、資産形成としてはそちらのほうが効率的です。保険という言葉が出てきた瞬間に、話題が式の外へ移っていることに気づいてください。

③ 家賃保証があるので安心です

サブリースや家賃保証は、式の家賃収入の項を平準化する仕組みです。空室の月も一定額が入ります。ここも嘘ではありません。

ですが平準化には代償があります。保証会社の手数料が乗るため、受け取る家賃の総額は下がります。加えて保証賃料は契約更新のたびに見直され、下がることもあります。つまり家賃収入の項は、安定する代わりに小さくなり、しかも永久には保証されません。空室リスクを金で買う仕組みだと理解しておきましょう。買値の失敗を埋め合わせる仕組みではありません。

利回りという言葉も、式を隠しています

物件資料の一番目立つところに書かれている表面利回り。あれが何を計算しているか、正確に言えるでしょうか。

年間家賃を購入額で割っただけです。売却額の項がありません。経費の項もありません。保有期間という時間の概念もありません。4項のうち2項が消えているのです。だから表面利回りは、式が成り立たない物件でも堂々と高い数字を出せてしまいます。

地方の築古物件で表面利回り15%という資料を見たとしましょう。式に戻して考えれば、問いは一瞬で変わります。

その家賃はいつまで維持できるのか。修繕にいくらかかるのか。そしてその物件を、10年後に誰が買ってくれるのか。売却額の項が限りなくゼロに近い物件は、家賃で回収し切るまで持ち続ける以外に道がありません。それは投資というより、期限つきの装置を買うことに近いといえます。

逆に都心の新築ワンルームで利回り4%という物件も、同じ式で測ってみましょう。家賃は安定します。売却額も落ちにくい。ですが買値に開発会社の利益と広告費が乗っているぶん、購入額の項が最初から膨らんでいます。膨らんだ買値を、薄い家賃と落ちにくい売値で回収し切れるのか。数字を入れれば答えは出ます。感情ではなく、計算の問題です。

買う前に式を検算する、3つの問い

ここまでが理屈です。ここからは、契約書にサインする前に必ずやるべき検算をお伝えします。

問い1:明日売ったら、いくらになるか

冒頭の問いに戻りましょう。同じエリア、同じ築年数、同じ間取りの成約事例を調べれば、答えはおおむね出ます。営業が提示する将来の想定価格ではなく、今日の実勢で調べてください。

ここで買値を大きく下回るなら、あなたは含み損を抱えた状態からスタートすることになります。その差額を家賃で埋めるには何年かかるのか、必ず計算してください。この一つの問いだけで、避けられる失敗が相当あります。

問い2:経費を、漏らさず積み上げたか

経費の項は、必ず過小に見積もられます。営業資料に載っているのは管理費と固定資産税くらいでしょう。実際には、空室期間の損失、入退去ごとの原状回復、給湯器やエアコンの交換、外壁や屋上防水などの大規模修繕、火災保険、そして売却時の仲介手数料と譲渡税まで入ってきます。

13年やって断言できます。修繕は必ず来ますし、必ず想定より高くつきます。設備は寿命が来れば壊れます。壊れる前提で経費に積んでおかないと、式は買った瞬間から破綻してしまいます。

問い3:出口の買い手を、名指しできるか

売却額の項を埋めるには、買ってくれる誰かが実在しなければなりません。10年後、この物件を誰が買うのか。次の投資家か、実需の居住者か、それとも買い手がつかないのか。

再建築不可、極端な狭小、需要が消えていく立地。こういった条件は、売却額の項をゼロに近づけます。買うときは安く見えても、出られない資産は資産と呼べません。入口の価格ではなく、出口の存在で判断してください。

そしてこの3つの検算は、自分一人でやると必ず甘くなります。買いたい気持ちがあるからです。人間はそういうふうにできています。だからこそ、利害関係のない第三者に数字を見せる工程を、購入プロセスに組み込んでおくといいでしょう。物件を売る立場にない人間に検算してもらう。それだけで、感情に流されて式を無視してしまう事故は避けられます。

それでも、業者の話は聞いたほうがいいでしょう

ここまで読んで、不動産会社もセミナーも全部避けるべきだと受け取られたなら、それは私の意図とは違います。

不動産投資は簡単ではありません。式は単純ですが、各項に入る数字を精度よく見積もるには経験が要ります。相場観、修繕の相場、融資の作法、管理会社の見極め。これらは本を読むだけでは身につきません。だから業者の話は聞いたほうがいいのです。セミナーにも行ったほうがいいでしょう。

順番が決定的に重要です。式を持たずに営業の前に座れば、あなたは相手のペースで話を進められてしまいます。式を持ってから座れば、同じ面談が業界を学ぶ授業に変わります。どの数字を強調し、どの数字を出さないのか。どんな話法で不安を煽り、どんな言葉で決断を急がせるのか。これを観察するのは、率直に言って面白いものです。

この式を腹に落としたうえで、明日セミナー会場の席に座ってみてください。同じ会場、同じ講師、同じスライドです。それでも、そこはまったく違う場所になっているはずです。

以前なら、利回り8%というスライドに心が動いていました。今は、売却額の項と経費の項が抜けていることに気づきます。

以前なら、節税で年間30万円戻りますという説明に前のめりになっていました。今は、30万円戻る前提として、いくら損する設計になっているのかを逆算します。

以前なら、今が買い時ですと言われて焦っていました。今は、焦らせる言葉が出てきたタイミングそのものを観察しています。

講師は何も変わっていません。あなたの物差しが変わっただけです。そして物差しを持った人間にとって、セミナーは金を払う場所ではなく、情報を回収する場所に変わります。

不動産会社の無料セミナーでも、有料のスクールでも同じです。式を持たずに行けば、あなたは商品を売られる側でしかありません。式を持って行けば、相手が何を隠し、どこで畳みかけてくるかまで見えてきます。同じ2時間が、授業料を払う時間から、授業料を回収する時間に変わるのです。

私が面談した会社の中には、突っ込んだ質問に数字で正面から答えてきた会社もありましたし、商品説明しかできない担当者もいました。契約しなかった会社もあります。ですがどの面談も無駄ではありませんでした。式という物差しを持って行けば、買わなくても必ず何かを持ち帰れます。

当ブログで個別の不動産会社やスクールを検証しているのは、この物差しを当てるためです。その会社が扱う商品は、家賃と売値と経費と買値の式を通るのか。通らないなら、なぜ通らないのか。通らない商品を売る会社であっても、業界の構造を学ぶ相手としては価値があります。そういう整理で書いています。

13年やって、結局わかったこと

冒頭の白状に戻ります。私はこの式を理解しないまま買い始めました。鳥取に住みながら、遠く離れた土地の物件を増やしてきました。滞納も、孤独死も、購入直後の一斉退去も、数百万円単位の設備交換も経験しています。

その中で回っている物件と、苦しんだ物件があります。振り返って恐ろしいのは、回っている物件が回っているのは、私が賢かったからではないということです。結果として式が成り立っていただけなのです。逆に苦しんだ物件は、買った瞬間から式が破綻していました。当時の私は、その違いを言葉にできませんでした。

だから、この記事で伝えたいのは私の成功談ではありません。買う前に式を検算するという、たった一つの習慣です。これがあれば、私が13年かけて授業料を払って学んだことの大半を、先に手に入れられます。

不動産投資は、やめておけという話ではありません。銀行の融資を使って自分の資金以上の資産を動かせる仕組みは、他の投資にはない強みです。ただし、その強みは式が成り立っている物件でしか意味を持ちません。式が破綻した物件にレバレッジをかければ、損失が拡大するだけになってしまいます。

家賃収入 + 売却額 - 経費 > 購入額。

物件を前にしたとき、営業の説明を聞いているとき、迷って眠れない夜に。この式に戻ってきてください。判断に困ったら、いつでもここに戻ってくればいいのです。当ブログの記事は、すべてこの式を物差しにして書いています。

この式を、実際の判断にどう使うか

式そのものは、ここまで書いた通りです。ただ、物件を探している段階と、すでに持っていて運営している段階とでは、式のどの項を検算すべきかが違います。知る、準備する、買う、育てる、守る、手放す。この6つの段階に分けて、当ブログの記事を並べ直したのが下の地図です。

いま自分がどの段階にいるかわからなければ、まずここをご覧ください。

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