- 金利が上がりそうだから、繰り上げ返済をして返済額を抑えたい
- でも、手元の現金を一度に使ってしまって大丈夫だろうか
- 本音を言えば、現金を減らしたあとに空室や修繕が起きて、お金が足りなくなるのが怖い
日銀の利上げのニュースを見て、不動産投資のローンを繰り上げ返済するか迷っていませんか。返済が増える前に、手元のお金で借入を減らしておきたいと考えるのは自然なことです。
ただ、手元のお金を使い切ったあとに空室や設備の故障が起きると、毎月の収支を立て直せなくなります。繰り上げ返済をするかどうかは、手元に残す現金の目安を決めれば、自分で判断できます。
結論から言うと、繰り上げ返済より先に、ローン返済の半年分の現金を貯めてください。そのうえで残ったお金だけを、金利の高いローンから返します。
私は地方在住・大家歴13年の現役サラリーマン大家です。3棟38室を運営し、いま手元に残る税引前キャッシュフローは月30万円。これを5年間継続できています。
私は13年間、一度も繰り上げ返済をしていません。手元に現金を残してきたから、キャッシュフローが回らなくなった時期も乗り切れました。
本文では、手元に残す現金の目安の出し方を、実際の金額で紹介しています。返済予定表が1枚あれば、5分で出せる計算です。
目安が分かると、繰り上げ返済に回してよい金額がはっきりします。利上げのニュースを見るたびに迷う時間も、もう要りません。
まずは返済予定表を手元に用意して、毎月の返済額を確かめるところから始めましょう。手元の現金を減らさずに利息を減らす方法として、借り換えの試算も無料でできます。
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繰り上げ返済で減るもの・増えるもの|期間短縮型と返済額軽減型

繰り上げ返済で減るのは、将来払うはずだった利息です。一方で、手元の現金が減るので、空室や修繕に払えなくなる心配は増えます。
不動産投資のローンを繰り上げ返済する方法は、期間短縮型と返済額軽減型の2つです。返し終わる時期を早めるか、毎月の返済額を減らすかの違いです。
期間短縮型と返済額軽減型の違い
毎月の返済額は変えずに、返し終わる時期を早める方法を、期間短縮型と言います。残りの返済期間が縮まるので、払う利息を大きく減らせます。
返し終わる時期は変えずに、毎月の返済額を減らす方法は、返済額軽減型です。毎月の手残りは増えますが、減る利息は期間短縮型より小さくなります。
利息の合計を減らしたいなら期間短縮型、毎月の手残りを増やしたいなら返済額軽減型を選びます。
よくある1棟目のモデルで、300万円を繰り上げ返済したときの違いを試算しました。借入2,700万円・25年・金利2.1%・元利均等返済で、毎月の返済は約11.6万円です。返済を始めて5年、ローンの残りが約2,267万円になった時点で返した場合です。
| 方法 | 毎月の返済 | 返し終わる時期 | 減る利息(合計) |
|---|---|---|---|
| 期間短縮型 | 約11.6万円のまま | 約3年2か月早まる | 約142万円 |
| 返済額軽減型 | 約10.0万円(月約1.5万円減る) | 変わらない | 約68万円 |
減る利息の合計は、期間短縮型のほうが約74万円多くなります。返済額軽減型は、毎月の返済が約1.5万円軽くなります。なお、300万円はこのモデルの返済の約2年2か月分です。
繰り上げ返済で減るもの
減るのは、銀行に払う利息です。元金を早く返す分、その元金にかかるはずだった利息を払わずに済みます。
上の試算では、300万円を返すと、期間短縮型で約142万円、返済額軽減型で約68万円の利息が減ります。ただし、最初の1年に減る利息は約6万円です。金利が高いローンほど、同じ金額を返したときに減る利息は大きくなります。
繰り上げ返済で増えるもの
増えるのは、手元の現金が足りなくなる心配です。突然の空室や修繕が来たときに、払えるお金が減ります。
税金も少し増えます。不動産所得の計算で、ローンの利息は経費になりますが、元金の返済は経費になりません。繰り上げ返済で利息が減ると、経費も減ります。
上の試算で最初の1年に減る利息約6万円が経費から減ると、税率30%の人なら税金は約2万円増えます。減った利息の分が、そのまま手元に残るわけではありません。
もう1つは、団信の保障です。団信(団体信用生命保険)は、ローンを借りた人が亡くなったとき、ローンの残りが保険で払われる仕組みです。
繰り上げ返済でローンの残りを減らすと、保険で払われる額も減ります。団信を生命保険の代わりと考えている人は、その分の保障が減ります。
私が13年、繰り上げ返済をしていない理由

私が13年間、一度も繰り上げ返済をしていないのは、手元に現金を残していたから、苦しい時期を乗り切れたからです。借入を減らすより、突然の出費に払える現金を持つことを優先してきました。理由は3つあります。
- 手元に現金を残していたので、キャッシュフローが回らなくなった時期も、銀行に相談する時間を持てました
- 大きな修繕は突然来ます。受水槽の交換だけで、松本の物件で約150万円、甲府の物件で約200万円を払いました
- 金利は、繰り上げ返済ではなく、銀行との交渉で下げてきました。遅れのない返済の実績があれば、手元の現金を減らさずに交渉できます
私には以前、キャッシュフローが回らなくなった時期があります。借入先のスルガ銀行に事情を正直に相談し、1年間、元金の返済を止めてもらい、利息だけを払う形にしてもらいました。その分あとの返済は増えましたが、その時期を乗り切れました。
もし手元の現金を繰り上げ返済に使ってゼロにしていたら、銀行に相談する前に返済が遅れていたはずです。現金を残していたから、返済を遅らせずに、交渉の時間を作れたのです。
繰り上げ返済を急ぐ前に、手元に残す現金の額を決めてください。目安の出し方は、このあと紹介します。

手元の現金が減ると、設備が壊れたり空室が出たりしたときに、打てる手がなくなります。私はいつも、まず現金を残すほうを選んできました。
繰り上げ返済の前に貯める現金の目安は、ローン返済の半年分

繰り上げ返済の前に貯める現金の目安は、ローン返済の半年分です。この額を手元に残したうえで、余ったお金だけを繰り上げ返済に回します。
不動産会社の大成ハウジングによるアパート経営の解説でも、頭金とは別に、半年〜1年分のローン返済額に当たる手元資金を確保する設計が望ましいと書かれています。
出し方は簡単です。銀行から届く返済予定表で毎月の返済額を確かめ、その金額を6倍します。
| 例 | 毎月の返済 | 半年分 |
|---|---|---|
| よくある1棟目のモデル | 約11.6万円 | 約70万円 |
| 私の3棟 | 約96万円 | 約578万円 |
よくある1棟目のモデルなら、半年分の目安は約70万円です。私の3棟は、年間の返済が約1,156万円、毎月約96万円なので、半年分は約578万円になります。
私は毎月、家賃のうち12万円を別の口座に移して貯めています。年にすると144万円です。繰り上げ返済にも使えるお金ですが、まだ一度も返済には回さず、設備の故障や空室への備えとして残しています。
どんなに利上げのニュースが続いても、手元の現金を半年分に保つことを先にしてください。
繰り上げ返済をすべき人・しなくていい人

半年分の現金を残したうえで、次の3つのどれかに当てはまるなら、繰り上げ返済をすべきです。当てはまらないなら、返さずに手元に残してください。
繰り上げ返済をすべき人
繰り上げ返済をすべき人
- 毎月のキャッシュフローがマイナスの人
- 金利が高く、金利交渉も借り換えもできなかった人
- 次の物件を買う予定がなく、退職が近い人
キャッシュフローがマイナスなら、返済額軽減型で返して、毎月の返済を減らします。上の試算では、300万円を返すと毎月の返済が約1.5万円軽くなりました。給料から毎月補っている状態を、先に止めてください。
金利が高いほど、返したときに減る利息は大きくなります。金利交渉も借り換えもできなかったなら、残る手は繰り上げ返済です。
退職したあとも、ローンの返済は続きます。退職までにローンの残りを減らしておけば、年金と家賃で暮らす時期の返済が軽くなります。
繰り上げ返済をしなくていい人
繰り上げ返済をしなくていい人
- ローン返済の半年分の現金が、まだ貯まっていない人
- 次の物件を買うつもりの人
- 団信を生命保険の代わりにしている人
私は2つ目です。半年分を超えて貯まった分も返さないのは、次の物件を買える機会を探すためです。良い物件が出たときに、頭金と諸費用を出せなければ見送るしかありません。
迷ったら金利×(1-税率)で比べる
どちらに当てはまるか迷うときは、繰り上げ返済の本当の利回りを出します。式は、ローンの金利×(1-税率)です。
繰り上げ返済で減る利息は、もともと経費でした。経費が減る分だけ税金が増えるので、手元に残る得は、ローンの金利より小さくなります。
| ローンの金利 | 繰り上げ返済の本当の利回り(税率30%の人) |
|---|---|
| 2.1% | 約1.5% |
| 3.1% | 約2.2% |
| 4.5% | 約3.2% |
税率は、所得税と住民税を足した率です。給与と不動産所得を合わせて、課税される所得が330万円を超え695万円以下の人は、所得税20%と住民税10%で約30%になります。
金利2.1%なら、返したお金は年約1.5%で増えるのと同じです。そのお金を次の物件の頭金に使い、年1.5%より多く手元に残せるなら、残すほうが得です。そうした使い道がないなら、返してください。
繰り上げ返済のタイミングと、返すローンの順番

繰り上げ返済のタイミングは、手元に返済の半年分が貯まり、さらに余ったお金が出たときです。ローンが複数あるなら、金利の高いローンから返します。
返す順番は、次のとおりです。
- 金利の高いローンから返す
- 同じくらいの金利なら、残りの返済期間が長いローンから返す
- 変動金利で、金利の見直しが近いローンから返す
金利が高いローンほど、元金を減らしたときに減る利息が大きくなります。金利が同じくらいなら、残りの期間が長いローンのほうが、これから払う利息の合計が大きいので、減る利息も大きくなります。
変動金利で、金利の見直しが近いローンも候補です。見直しの前に元金を減らしておけば、金利が上がったときの返済の増え方が小さくなります。
返す前に、手数料も確かめておきましょう。繰り上げ返済の手数料は、銀行と契約の内容によって異なります。無料の銀行もあれば、手数料がかかる銀行もあります。
ローンの契約書の「繰上返済」の項目と、銀行の手数料一覧で、金額と申し込み方法(窓口・電話・ネット)を確かめてください。いくらから返せるかも、銀行によって異なります。
利上げのニュースを見て返済を急ぎたくなったら、契約書で金利の見直しの時期を確かめてください。変動金利でも、ニュースの翌日から返済額が変わるわけではありません。
金利が上がったときに返済がいくら増えるかは、不動産投資は金利上昇でどうなる?で試算しています。
繰り上げ返済の前に試す2つ|金利交渉と借り換え

利上げが不安で繰り上げ返済を考えているなら、手元の現金を使わずに利息を減らせる、金利交渉と借り換えの試算を先に試してください。
今の銀行に金利交渉する
1つ目は、今の銀行への金利交渉です。松本の一棟アパート(10室)は、スルガ銀行の変動金利のフルローンで、当初の金利は4.5%でした。買って2年ほどたったころ、遅れのない返済の実績を材料に交渉し、借り換えずに3.1%まで下げてもらいました。
甲府の一棟マンションも、当初は4.5%でした。交渉を半年先延ばしにして約40万円を余分に払いましたが、その後の交渉で3.1%に下がっています。手順はスルガ銀行の金利引き下げ交渉|4.5%を3.1%に下げた実体験に書きました。
金利が1%上がると、私の3棟の返済は年約92万円(月約7.7万円)増えます。手元の現金を減らさずに金利を下げられるなら、先に試す価値があります。
借り換えを試算する
2つ目は、ほかの銀行への借り換えです。事務手数料や登記の費用がかかるので、下がる利息でその費用を何年で取り戻せるかを計算してから決めます。
借り換えの条件はアパートローンの借り換えは可能?にまとめました。試算だけなら、無料のサービスで今日できます。
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不動産投資の繰り上げ返済でよくある質問

- Q繰り上げ返済はやったほうが良いですか?
- A
ローン返済の半年分の現金を残したうえで、さらに余ったお金があるなら、してもよいです。半年分がない状態で返すと、突然の修繕や空室に払えなくなります。借入を減らすより、払える現金を残すことを先にしてください。
- Q300万円繰り上げ返済したらいくら効果がありますか?
- A
借入2,700万円・25年・金利2.1%のモデルで、5年後に300万円を返した場合、期間短縮型なら約142万円、返済額軽減型なら約68万円の利息が減ります。
期間短縮型は返し終わる時期が約3年2か月早まり、返済額軽減型は毎月の返済が約1.5万円軽くなる計算です。
- Q繰り上げ返済と投資のどちらが得か?
- A
繰り上げ返済に回すと、払う利息は減ります。手元に残せば、空室や修繕への備えになり、次の物件の頭金にも使えます。
半年分を残したうえで比べるのは、ローンの金利×(1-税率)で出した率と、そのお金を次の物件などに使って得られる率です。金利2.1%・税率30%なら約1.5%で、これより多く増やせる使い道がなければ返してください。
すべき人の見分け方は、繰り上げ返済をすべき人・しなくていい人にまとめました。
- Q不動産投資の5年ルールとは?
- A
2つの意味があります。1つ目は、物件を売るときの税金の決まりで、持っていた期間が5年以下だと短期譲渡で税率は39.63%、5年を超えると長期譲渡で20.315%です。
2つ目は、住宅ローンにある、金利が上がっても5年間は返済額を変えない決まり(5年ルール・125%ルール)です。投資用のローンにあるかは、銀行ごとに異なります。
- Q繰り上げ返済した分は、確定申告で経費になりますか?
- A
まとめ|繰り上げ返済は、現金を残したうえで余った分だけ

不動産投資の繰り上げ返済は、払う利息を減らす方法です。ただ、手元の現金を減らしすぎると、突然の修繕や空室に払えなくなります。繰り上げ返済は、現金を残したうえで、余った分だけにしてください。
- ローン返済の半年分の現金を先に貯める
- 余ったお金だけを、金利の高いローンから返す
- 利上げが心配なら、金利交渉と借り換えの試算を先に試す
- 迷ったら、ローンの金利×(1-税率)と、手元に残したお金の使い道を比べる
まずは返済予定表を開き、毎月の返済額から半年分の金額を出してみてください。手元に残す額が決まれば、利上げのニュースを見ても、落ち着いて次の判断ができます。
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