「次の融資は、今の状態では難しいですね」
銀行担当者のその一言は、サラリーマン大家にとって最もキツい言葉のひとつです。1棟目を必死に回しながら、ようやく次のステージを狙い始めた矢先——確定申告書の「赤字」という数字が、あなたの野望に静かにブレーキをかける。
実は私も、この壁に正面からぶつかった大家のひとりです。スルガ銀行から松本・甲府の2物件で融資を引き、計約2億円の残債を抱えながら鳥取から遠隔管理を続けてきた私が、銀行と正面向き合ってきた13年分の現実をお伝えします。
この記事の結論を先に言います。
銀行が恐れているのは「赤字」という数字そのものではありません。「この人はキャッシュで返済できない人間なのか」という不信感です。つまり、赤字の「中身」を理解し、銀行が本当に見ている数字を整えれば、挽回の道は必ず開けます。
この記事では、①銀行が確定申告書のどこを見ているか、②なぜ節税が融資の首を絞めるのか、③実際に評価を改善するための具体策——この3点を、元スルガ銀行融資案件の当事者として実務家目線でお伝えします。
銀行は「どこ」を見て融資を止めるのか?確定申告書の評価ポイント全解説

融資担当者が実際にチェックする3つの数字
銀行の融資担当者は、あなたの確定申告書(不動産所得の収支内訳書)を受け取った瞬間、3つの数字に目を走らせます。
① 減価償却前の営業利益(実態キャッシュフロー)
銀行が評価する利益は減価償却前の利益です。そのため、減価償却前の利益(≒キャッシュフロー)が黒字であれば、減価償却後が赤字でも問題ありません。
つまり、節税目的で「減価償却による帳簿上の赤字」を作っている分には、銀行は必ずしも問題にしません。問題なのは、減価償却を差し引く前の段階からすでに赤字になっているケースです。空室による収入減や修繕費の急増で実態収支がマイナスになっている状態——これが銀行に「危険な経営者」と判断される本当の赤字です。
② 返済比率(ローン返済額÷満室時収入)
返済比率とは、物件が満室の状態で得られる収入に対する、ローン返済の割合のことで、返済比率(%)=(ローン返済額÷満室時収入)×100で計算します。返済比率は一般に50%以下が望ましいとされています。
私の松本・甲府の物件は、購入直後の5室同時退去、受水槽交換150万円、さらに水タンク修繕200万円という連続打撃を受け、この返済比率が一時的に大きく悪化しました。家賃も強引に下げざるを得なかったため、満室時の収入自体が想定より低くなっていたのです。
③ 借入総額と自己資本比率
2棟目の融資を受けるなら、1棟目の決算書が黒字かどうかも重要です。赤字決算が続いている場合、事業計画やビジネスモデルに十分な説得力がないかぎり、追加融資を受けられる可能性は低くなります。
貸借対照表における「純資産÷総資産」が自己資本比率です。これが低いほど、銀行は「この人物件の値下がりリスクに耐えられないのでは」と判断します。
「節税のため赤字にした」は銀行に通じるか?
よく誤解されるのが、「減価償却で帳簿を赤字にしても銀行は問題視しない」という理解です。これは半分正しく、半分間違っています。
減価償却のみによる赤字は問題ありません。しかし、実態のキャッシュフローまでマイナスになっている場合、節税どころか融資の門を永久に閉ざす行為になります。
私の場合、松本・甲府の2物件でキャッシュフローが本当に回らなくなり、スルガ銀行に正直に窮状を打ち明けました。その結果、1年間の元金返済猶予(リスケジュール)を獲得し、その間に約100万円のキャッシュを積み上げることができました。節税や帳簿操作の前に、実態の収支改善が先——これが私の原点的な反省です。
「節税しすぎ」が2棟目の首を絞める——過剰経費計上と銀行評価の関係

「節税になる」という魔法の言葉に乗った結果
私が尼崎の870万円ワンルームを購入した当時、不動産業者から「税金対策になりますよ」という一言がありました。今となってはありきたりな売り文句ですが、当時の私には実に刺さった。
節税目的で新築区分マンションを購入し、節税効果が得られないと気づいた後に、本来大きな節税効果が得られる中古アパートを購入して挽回しようとしたときには、物件が赤字になっており追加で融資を受けられない状態になってしまった—— という事例は、決して他人事ではありません。
節税と融資可能性はトレードオフの関係にあるのです。帳簿上の赤字を深掘りすればするほど、次の融資の扉は重くなっていく。これが「節税の罠」の本質です。
過剰経費計上が引き起こす3つの弊害
① 確定申告書が赤字続きになり、銀行の印象が悪化する ② 自己資本比率の改善が遅れる ③ 実態キャッシュが枯渇し、いざという時の修繕対応ができなくなる
私は甲府の物件で、購入後まもなく5部屋が一気に退去するという事態を経験しました。あの当時、節税で現金を絞りきった状態であれば、受水槽の全交換や水タンク修繕の費用をどこから捻出できたか。家賃相殺で1年かけてしのいだ経験は、「節税より手元キャッシュの方が命綱だ」という確信を私に植え付けました。
ところで、この「節税の罠」と密接に絡む問題がもうひとつあります。それが「デッドクロス」です。帳簿が黒字なのに手元のキャッシュが消えていくあの恐怖——融資をストップされる前に、このメカニズムだけは必ず理解しておいてください。
デッドクロスの恐怖|帳簿黒字なのに手元にお金がない「黒字倒産」のからくり
銀行評価を改善する挽回策①——「黒字決算」に切り替える戦略

過剰な経費計上をやめて「見せる決算書」に変える
銀行評価を改善するための第一歩は、シンプルです。「節税のための赤字決算」をやめ、銀行が安心できる黒字決算に切り替えること。
具体的には、以下の経費計上を見直すことが有効です。
- 実態を伴わない消耗品・備品の駆け込み計上をやめる
- 修繕費として一括計上していた支出を資本的支出として減価償却に切り替える
- 交際費・通信費などの按分経費を適正水準に戻す
ただし、これはあくまで「過剰な節税をやめる」ということです。正当な経費計上まで削る必要はありません。税理士と相談の上、「銀行が読む決算書」と「税務上の最適化」のバランスを意識してください。
重要なのは、経費を削ることで浮いた利益が「キャッシュフローの改善」として決算書に反映されるという点です。たとえ年間50〜100万円規模の経費圧縮であっても、2〜3年継続すれば決算書の顔つきは大きく変わります。
「減価償却前利益」を武器にして銀行担当者と交渉する
前章で述べた通り、銀行は減価償却前の実態利益を重視します。これを逆手に取り、自分で「実態キャッシュフロー計算書」を作成して銀行担当者に提出するという戦術が有効です。
書式は難しくありません。
家賃収入合計 ●●万円
- 実際の現金支出(管理費・修繕費・ローン利息) ●●万円
= 実態キャッシュフロー(減価償却前利益) ●●万円
- 減価償却費(非現金支出) ●●万円
= 確定申告上の不動産所得(帳簿上の利益) ●●万円
この表を1枚添付するだけで、「帳簿は赤字だが、実態ではキャッシュが回っています」という説明が格段にしやすくなります。私自身、スルガ銀行とのリスケ交渉の際に、口頭でこの構造を説明し続けたことが、元金猶予を引き出せた一因だったと感じています。
銀行評価を改善する挽回策②——自己資本比率と返済比率を整える

自己資本比率の計算と銀行が求める目安
自己資本比率は、貸借対照表から以下の式で求めます。
自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100
不動産賃貸業においては、一般的に10〜20%以上あると銀行の印象が良くなります。逆に、フルローン・オーバーローンで購入した物件が複数あると、これが一桁台になることも珍しくありません。
私の場合、松本の物件をスルガ銀行フルローン(当初金利4.5%)、甲府の物件も同じくスルガ銀行で8,900万円を引いたため、自己資本比率は当初ほぼゼロに近い状態でした。この状況で次の融資を申し込んでも、銀行から見れば「すでに限界まで借りている人」にしか映りません。
自己資本比率を改善するための現実的な手段は、主に3つです。
① 毎月の元金返済を着実に続け、残債を減らす 地味ですが最も確実です。リスケで元金猶予を使った私にとって、猶予期間後に元金返済を再開した瞬間から、少しずつ自己資本比率が改善し始めました。
② 手元キャッシュを積み上げ、純資産として計上する 物件価格の20%程度を頭金として備えると、金融機関からの信頼が高まり、融資条件の優遇を受けやすくなります。 2棟目を狙うなら、まず頭金相当のキャッシュを積むことが先決です。
③ 保有物件の価値を維持・向上させる 担保評価が下がると純資産も目減りします。空室を埋め、家賃水準を維持することが、実は銀行評価の維持にも直結しています。
返済比率の改善:家賃を上げるか、ローンを見直すか
返済比率を下げる方法は2方向です。
- 分子を減らす(ローン返済額を下げる):金利交渉・借り換え
- 分母を増やす(満室時収入を上げる):空室対策・家賃改定
私は松本の物件で当初4.5%だったスルガ銀行の金利を、2年後の粘り強い交渉で3.1%まで引き下げることに成功しました。パーセントにすれば1.4ポイントですが、残債規模によっては年間数十万円単位の差になります。融資を諦める前に、まず金利交渉を試みることを強くお勧めします。
ただし、節税目的で過剰に赤字決算を作っていると、この金利交渉すら不利になります。「収支が苦しいから金利を下げてほしい」と言いながら「実は節税で意図的に赤字にしています」では、銀行担当者との信頼関係が崩れます。
ここで、節税の「嘘」と「本当」についてより深く知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。不動産投資の節税スキームが実は将来の融資にどう響くか、私の実体験を交えながら解説しています。
【完全暴露】不動産投資「節税のからくり」の嘘と真実|高収入サラリーマンが陥る罠を数字で解説
2棟目融資を通すための「銀行選び」と交渉戦術

メガバンク・地銀・信金——属性別の使い分け戦略
銀行には種類があり、それぞれ審査基準が異なります。1棟目でどこかの銀行に断られたとしても、すべての銀行が同じ基準で審査しているわけではありません。
| 金融機関 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| メガバンク | 審査厳格・金利低め | 属性最高クラス・都市圏物件 |
| 地方銀行 | 地域密着・物件所在地重視 | 地方物件・地元の事業実績あり |
| 信用金庫 | 小規模案件に柔軟・関係重視 | 小規模物件・長期の付き合い |
| ノンバンク | 審査通りやすい・金利高め | 銀行NGの場合の最終手段 |
地銀は地域特性を踏まえた審査を行うことが多く、都市銀行より有利なケースがあります。一方、ノンバンク系の場合、手続きは速いが金利が高めになる傾向があります。
私の経験では、スルガ銀行(当時は積極的なノンバンク的融資スタンス)で地方中古物件のフルローンを引けたのは、まさにその「柔軟さ」の恩恵でした。ただし金利は4.5%からスタート——柔軟さには必ず相応のコストがつきます。
ノンバンクや審査の甘い金融機関でフルローンを引くことは「融資を通す」という目的は達成できますが、高金利が長期間のキャッシュフローを蝕みます。使う場合は出口戦略とセットで考えてください。
「決算書の読み替え」を銀行担当者に説明する技術
融資交渉は、数字の提出だけでは終わりません。担当者が「この人は経営者として信頼できる」と感じるかどうかが、最終的な可否に影響します。
具体的に意識すべき点は以下の3つです。
① 赤字の原因を先手で説明する 「昨年は受水槽の全交換で150万円の臨時支出があったため赤字になりました。今年は正常化しています」——このような先手の説明ができる大家と、黙って赤字の申告書だけ出す大家では、担当者の受け取り方がまったく異なります。
② キャッシュフロー計算書を自作して添付する 先述の実態キャッシュフロー表を毎年更新し、決算書と一緒に提出する習慣をつけましょう。金融機関は確定申告時の損益計算書・貸借対照表に加え、キャッシュフロー計算書も独自に作成して審査を行うことがあります。 こちらが先回りして出すことで、担当者の作業が減り、印象も上がります。
③ 同じ担当者と長期関係を築く 決算書を毎年提出すれば、担当者が小まめに経営状況を確認できます。経営状況が安定していれば、2棟目や3棟目も融資を受けられる確率が高まるでしょう。 担当者が異動しても、履歴が残る金融機関との関係は財産です。
法人化は銀行評価改善の切り札になるか?

個人と法人では、銀行の「見方」がどう変わるか
法人化すると、確定申告書に代わって「法人決算書」が融資審査の対象になります。この切り替えが、評価改善の切り札になり得る場面があります。
個人の場合、赤字の不動産所得は給与所得との損益通算で節税に使えますが、同時に「不動産経営で赤字の人」という評価が確定申告書に刻まれます。一方、法人の場合は個人の給与所得と不動産所得が分離されるため、法人決算書上で黒字を作りやすくなります。
また、法人化すると経費の範囲が広がり、役員報酬として収入を分散できるため、個人の課税所得を圧縮しながら法人の決算書を整えるという二面的な戦略が取れます。
ただし、法人化はコストと手間を伴います。法人設立費用・税理士報酬・社会保険料負担の増加——これらを差し引いてもメリットが出るかどうかは、物件規模と収益水準によります。
法人化のタイミングと判断基準については、親記事で詳しく解説しています。規模拡大を狙う前に、まずこちらで自分が法人化すべき段階にあるかを確認してください。
個人のまま?不動産投資「法人化」の目安と最適タイミングを徹底解説|サラリーマン大家の税金戦略
よくある質問(Q&A)

- Q確定申告で赤字が続いていますが、2棟目の融資は絶対に無理ですか?
- A
絶対に無理というわけではありません。重要なのは「赤字の中身」です。減価償却費が原因の帳簿上の赤字であれば、実態キャッシュフローが黒字である旨を銀行担当者に説明できれば道は開けます。一方、空室や修繕費の多発による実態赤字であれば、まず1棟目の経営改善が先決です。自作のキャッシュフロー計算書を決算書に添付し、「帳簿の赤字と実態の違い」を先手で説明する姿勢が評価を変えます。ただし、過剰な節税による赤字が続いている場合は、1〜2年かけて経費計上を適正化し、黒字決算に切り替えてから再アプローチするのが現実的な戦略です。
- Qスルガ銀行など高金利ローンを抱えていますが、借り換えで銀行評価は改善しますか?
- A
借り換えは、金利引き下げによるキャッシュフロー改善と、返済比率の改善という2つの効果があります。ただし、借り換え先の銀行も当然「現在の経営状況」を審査します。赤字決算のまま借り換えを申し込んでも通りません。まず金利交渉(現在の融資銀行への引き下げ要請)を先に試み、それでも限界があれば他行への借り換えを検討するという順番が現実的です。私自身、松本の物件でスルガ銀行との交渉により4.5%→3.1%への引き下げに成功した経験があります。「諦める前にまず交渉」が鉄則です。
- Qサラリーマンとしての給与収入が高ければ、不動産の赤字があっても融資は通りますか?
- A
給与収入の高さは確かに有利な属性です。しかしそれだけでは不十分で、不動産経営の実態収支が別途評価されます。銀行は「この人はサラリーマン収入で返済できるか」ではなく「この物件は物件単体で収益を生んでいるか」を見ます。高収入サラリーマンが節税目的で赤字物件を複数持っている場合、給与の与信で引ける借入枠は年収の10〜20倍程度とも言われますが、不動産所得が赤字続きであれば、その枠は急速に詰まっていきます。サラリーマンの与信を「使い切る前に」、不動産の収支を整えることが長期戦略の肝です。
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まとめ:融資を止められた日から、逆転は始まる

「次の融資は難しい」——その言葉は終わりではありません。銀行が見ているのは過去の赤字ではなく、あなたが経営者として実態を把握し、改善できる人間かどうかです。
この記事の要点を振り返ります。
① 銀行が見ているのは「減価償却前の実態キャッシュフロー」 帳簿上の赤字と実態の黒字を、自作のキャッシュフロー計算書で説明できれば、評価は変わります。
② 節税のための過剰な赤字決算は、融資の門を閉ざす 節税と融資可能性はトレードオフです。次の物件を狙うなら、1〜2年前から「見せる決算書」に切り替える準備を始めてください。
③ 返済比率・自己資本比率の改善は地道な積み上げ 金利交渉、元金返済の継続、頭金キャッシュの蓄積——派手さはありませんが、これが銀行評価の現実的な改善策です。
④ 銀行は種類によって審査基準が異なる 1行に断られてもすべてではありません。地銀・信金など、複数行にアプローチする戦略を持ってください。
⑤ 法人化は「切り札」になり得るが、タイミングが重要 個人の赤字決算を法人決算書でリセットする効果はありますが、コストと手間を見極めてから判断してください。
私が13年かけて学んだのは、不動産投資において銀行は「敵」ではなく「事業パートナー」だということです。松本・甲府の苦境でスルガ銀行に正直に窮状を打ち明け、元金猶予を引き出せたのも、それまでの返済実績と誠実なコミュニケーションがあったからだと思っています。
銀行評価の改善は、一夜にはできません。しかし1年、2年と積み上げれば、必ず次の扉は開きます。
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また、銀行評価と直結する「法人化のタイミング」については親記事で、節税の正しい理解については以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご確認ください。


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