確定申告の還付金より固定資産税が多い?サラリーマン大家の赤字の現実

【STEP4】税金・売却の戦略

「確定申告したら、XX万円も戻ってきた!やっぱり不動産投資って節税になるんだ」

不動産投資を始めて最初の確定申告シーズン、そう感じた方は少なくないはずです。私自身もそうでした。サラリーマン給与と不動産所得を合算申告して、数十万円が口座に振り込まれる。あの瞬間は、正直、悪い気はしませんでした。

しかし、今の私ははっきりと断言できます。

あの「戻ってきたお金」は、貯金でも利益でもありません。

その直後に届く固定資産税の納税通知書を見た瞬間に、あなたはすべてを理解するでしょう。「還付されたお金を、ほぼそのまま税金に払い戻しているだけだ」と。

私は現在、仙台・甲府・松本・尼崎・鳥取と5都市にまたがる物件を遠隔管理し、2億円超の負債を抱えながら13年間生き延びてきたサバイバー大家です。その経験から言えることは一つです。

「確定申告の還付金」と「節税」は、似て非なるものです。この二つを混同したまま物件を増やすと、帳簿上は黒字なのに手元にお金がない「黒字貧乏」という地獄に落ちます。

この記事では、確定申告の還付金の正体を解剖し、固定資産税・計画外コストによって手残りがどう消えていくかを、私の実体験の数字とともに明らかにします。「節税目的で不動産を買え」という業者トークに乗る前に、ぜひ最後まで読んでください。

「確定申告で還付金が来た!」——その喜びは本物ですか?

還付金の正体は「払いすぎた税金が戻るだけ」

不動産投資をしているサラリーマンが確定申告をすると、なぜ税金が還付されるのか。仕組みを正確に理解している人は、意外に少ないです。

給与所得者は毎月の給料から所得税が天引き(源泉徴収)されています。不動産投資で「不動産所得の赤字」が発生すると、それを給与所得と合算(損益通算)することで、課税所得が下がります。その結果、「本来払うべき税額」が「すでに払った税額(源泉徴収分)」を下回るため、差額が還付される——これが確定申告還付の仕組みです。

つまり「税金が減った」のではなく、「払いすぎていた分が精算されただけ」です。

不動産所得の赤字がなければ最初から払わずに済んでいたお金です。喜ぶ前に冷静になる必要があります。

不動産所得の赤字と損益通算の仕組み

不動産所得の赤字を作る主な要因は「減価償却費」です。建物の取得費を耐用年数にわたって毎年経費計上できるため、実際の現金支出がなくても帳簿上で赤字を作り出せます。

しかしここに大きな落とし穴があります。

減価償却は「税の繰延」です。消去ではありません。耐用年数が終われば減価償却費はゼロになり、それまで赤字だった帳簿が一転して黒字になります。黒字になれば税負担が増し、同時にローン残高は減らないまま「デッドクロス」が起きます。

この「デッドクロス」の恐怖については、実際に私が経験した帳簿黒字・手残りゼロの地獄を別記事で詳述しています。還付金の話と表裏一体なので、ぜひ合わせてお読みください。

デッドクロスの恐怖|帳簿黒字なのに手元にお金がない「黒字倒産」のからくり

「節税になった」と信じていた、あの日の私の勘違い

尼崎市の中古ワンルームマンションを870万円で購入したとき、担当者にこう言われました。「税金対策にもなりますよ」。当時の私はその言葉を文字通り受け取りました。

確定申告で数万円が戻ってくる。最初はそれだけで「投資が機能している」と感じていました。しかし実態はこうです。

  • ローン返済(元金+利息):毎月支出
  • 管理費:毎月支出
  • 固定資産税:年1回、まとめて支出

還付金は固定資産税の「補填資金」として消えていき、手元には何も残りませんでした。

「節税になる」という言葉の裏に、こうした構造が隠れていることを、購入前に誰も教えてくれなかったのです。

還付金を帳消しにする「固定資産税」という現実

固定資産税・都市計画税は「必ず出ていく固定費」

不動産を所有するということは、毎年必ず固定資産税・都市計画税を支払い続けるということです。空室であっても、キャッシュフローが苦しくても、この請求書は容赦なく届きます。

固定資産税の計算式は以下の通りです。

固定資産税=固定資産税評価額 × 1.4% 都市計画税=固定資産税評価額 × 0.3%(上限)

たとえば評価額5,000万円の物件なら、固定資産税だけで年間70万円。都市計画税を合わせれば85万円超の固定費が毎年出ていく計算です。月換算すると約7万円。空室が一部屋あれば、ほぼ吹き飛ぶ金額です。

物件数が増えるほど、固定費の総額は想像を超える

私の実感として、これが最も痛いポイントです。

甲府の18室+店舗物件、松本の10室物件、仙台の7室物件、尼崎の区分マンション、鳥取の区分マンション。これだけの物件を保有すると、固定資産税の納税通知書が春になると次々と届きます。

毎月のキャッシュフローが「なんとかプラス」に見えていても、春の固定資産税シーズンに一気にキャッシュが吹き飛びます。

私はこの構造を正確に理解してから、こう整理するようにしました。

「毎年の確定申告還付金は、固定資産税の積立金だ」

その認識に切り替えるだけで、還付金への錯覚は消えます。戻ってくるお金は、すでに使い道が決まっているのです。

計画外コスト(修繕・空室・保険更新)との合わせ技で赤字転落

固定資産税だけでも十分に手痛いのに、不動産投資にはもう一つの「刺客」がいます。計画外の修繕費用です。

私が経験した実例を挙げます。

  • 松本物件: 地下の受水槽に亀裂が発生、全とっかえで約150万円。家賃相殺で1年かけて払い切った。
  • 甲府物件: 同じく水タンクトラブルで約200万円の修繕見積もり。目の前が真っ暗になった。管理会社に頭を下げ続け、分割・家賃相殺でなんとか乗り越えた。
  • 甲府物件: 購入翌月に5室が同時退去。家賃を4〜5万円から2万円台後半まで引き下げてようやく次の入居者を確保。利回りは購入時の計算から大幅に乖離した。

これらはすべて「想定外」ではなく、「起こりうる現実」です。修繕コスト・空室損・固定資産税が重なった年は、確定申告の還付金など吹き飛んだ上で、さらに持ち出しになります。

本当に節税できているのか?年間収支を1枚のエクセルで確認する方法

「毎月のキャッシュフローはプラスになっている。確定申告でも還付金が来た。だから投資はうまくいっている」——そう思っているサラリーマン大家の方に、一つお願いがあります。

今すぐ、年間の収支を1枚の紙に書き出してみてください。

月次の収支だけ見ていると、固定資産税のような「年1回の大型支出」が視野から消えます。私がスルガ銀行に元金返済の猶予(リスケジュール)を申し出ざるを得なかった根本原因の一つも、まさにこの「月次管理の落とし穴」でした。

チェックすべき「4つのコスト項目」

年間収支を正確に把握するために、以下の4項目を必ず洗い出してください。

① 固定費(毎月確実に出ていくもの)

  • ローン返済(元金+利息)
  • 管理委託料(家賃の5〜10%)
  • 火災保険・地震保険料(月割り換算)
  • 共用部の電気代・水道代

② 年次固定費(年1回まとめて出ていくもの)

  • 固定資産税・都市計画税
  • 保険の更新料(数年に一度)

③ 変動費(発生頻度は読めないが必ず発生する)

  • 退去時のリフォーム・クリーニング費用
  • 設備の修繕・交換(給湯器、エアコン、インターホン等)
  • 空室期間中の機会損失(家賃ゼロ月)

④ 特別損失(数年に一度、突発的に発生する)

  • 大規模修繕(外壁、屋根、受水槽など)
  • 孤独死・事故物件化による家賃下落・原状回復費用
  • 訴訟・行政書士費用などの法的対応コスト

私の場合、甲府物件では④の受水槽トラブルだけで約200万円、松本物件でも約150万円が突発的に発生しました。これらは月次のキャッシュフロー計算には一切現れていなかったコストです。

還付金額と固定資産税額を並べて比較してみると…

試しにシンプルな比較をしてみましょう。

項目金額(例)
確定申告の還付金+30万円
固定資産税・都市計画税△25万円
退去リフォーム(年1回想定)△15万円
設備修繕(給湯器等)△10万円
実質の年間手残り△20万円

帳簿上の「節税効果」が30万円あっても、年間収支で見れば20万円の赤字。 これが多くのサラリーマン大家の現実です。

私自身、確定申告の還付金を受け取りながら、それをそのまま固定資産税・修繕費の支払いに充て、最終的にスルガ銀行へのローン返済が回らなくなり、元金1年間停止という緊急措置を取らざるを得ませんでした。その時に初めて「月次だけ見ていた自分の甘さ」を思い知らされたのです。

「帳簿黒字・手残りゼロ」の罠——デッドクロスとの関係

年間収支の問題をさらに深刻にするのが、時間の経過とともに訪れる「デッドクロス」です。

ローン返済において、初期は利息の割合が高く元金の返済が少ないため、経費計上できる「利息」が大きくなります。しかし年数が経つにつれて利息は減り、元金返済の割合が増えます。一方、減価償却費も耐用年数が近づくにつれて減少します。

つまり「経費にできる金額」が年々減り、「現金で払わなければならない元金」が増える。これがデッドクロスの正体です。

帳簿上は黒字(=税金を払う)なのに、手元の現金は減っていく。この状態を「黒字倒産予備軍」と呼びます。確定申告の還付金に喜んでいる段階では見えていないこの地雷が、物件保有5〜10年目に炸裂します。

デッドクロスを迎える前に打てる手と、私が実際に直面した「帳簿と現実の乖離」については、以下の記事で詳しく解説しています。年間収支を計算したあと、必ずこちらも確認してください。

デッドクロスの恐怖|帳簿黒字なのに手元にお金がない「黒字倒産」のからくり

それでも「節税目的」で不動産を買うのは罠である理由

節税の本質は「繰延」であり「消去」ではない

業者が「節税になります」と言うとき、その言葉の裏にある真実を正確に理解している人は少ないです。

減価償却による節税効果は、あくまで「今年の税負担を将来に先送りしているだけ」です。建物の耐用年数が終われば減価償却費はゼロになります。その瞬間から、それまで赤字申告で抑えていた税負担が一気に表面化します。

節税は「税の消去」ではなく「税の繰延」です。 先送りした分は、必ずどこかで回収されます。

さらに見落とされがちな点があります。節税で「取り戻した」はずの税金は、固定資産税・修繕費・空室損失という形で不動産事業の中に再吸収されます。結果として手元に残るお金はほとんどない、というのが多くのサラリーマン大家の実態です。

「減価償却が切れた後」に訪れる現実

私が保有する松本・甲府の物件は、購入からすでに相当の年数が経過しています。減価償却の恩恵が薄れるにつれ、確定申告の還付金も徐々に減少します。

しかし固定資産税は変わらず届きます。修繕費は物件が古くなるほど増えます。ローンの残債は、リスケした分だけ長期化しています。

「減価償却が使えるうちは節税になる」という業者の説明は正しい。しかし「使えなくなった後」の話を、業者はほぼ必ずしません。購入前に「耐用年数終了後の収支シミュレーション」を必ず確認してください。これをしてくれない業者とは取引しないことをお勧めします。

正しいサラリーマン大家の節税との付き合い方

では、節税効果を完全に否定するのかというと、そうではありません。正しく理解した上で「おまけ」として捉えることが重要です。

不動産投資における節税の正しい位置づけ:

  • 主目的: キャッシュフロー(月次の手残り)と出口(売却益または残債消滅)
  • 副次効果: 減価償却期間中の所得税・住民税の軽減(繰延)

節税を主目的にした瞬間、物件選びの基準が歪みます。「利回りが低くても節税になるから」という論理で、キャッシュフローの出ない物件を掴まされるのが、サラリーマン大家が最もやってはいけない失敗のパターンです。

私が尼崎のワンルームを購入したときの動機は、まさにそれでした。「870万円でリスクが低い。税金対策にもなる」——その言葉に乗った結果、ローンを含めれば赤字、残債400万円が残り、売却しようにも相場は400万円台という現実が今も続いています。

正直に言います。節税は「結果としてついてくるもの」であり、「目的にしてはいけないもの」です。

よくある質問(Q&A)

Q
確定申告で不動産所得の赤字を給与と損益通算すると、どのくらい還付されますか?
A

還付額は「給与収入の額」と「不動産所得の赤字額」によって大きく異なります。たとえば年収800万円のサラリーマンが不動産所得で年間100万円の赤字を計上した場合、適用される所得税率(概ね23%前後)と住民税率(10%)を合わせると、理論上は30万円前後の還付・軽減効果が生じます。ただし、この還付金はそのまま固定資産税・修繕費の支払いに消えるケースがほとんどです。 還付金を「利益」と勘違いして生活費に使ってしまうと、春の固定資産税シーズンに確実にキャッシュが不足します。還付金は「税金専用の積立金」として別管理することを強くお勧めします。

Q
節税目的で区分マンションを勧められています。買っても大丈夫ですか?
A

「節税目的」を主軸に据えた物件購入は、非常に危険です。私自身、「税金対策になりますよ」という言葉を真に受けて尼崎の区分ワンルームを870万円で購入しましたが、ローン返済を含めると収支は赤字、現在も残債400万円が残っています。節税効果は減価償却期間中の「一時的な繰延」に過ぎず、耐用年数が終われば消滅します。判断基準はシンプルに一つです。「節税効果をゼロと仮定しても、キャッシュフローがプラスになるか?」——この問いにYesと言えない物件は、買う理由がありません。

Q
固定資産税はどのタイミングで、どうやって把握すればいいですか?
A

固定資産税の納税通知書は、毎年4〜6月頃に物件所在地の市区町村から送付されます。一括払いまたは年4回の分割払いが選択できます。購入前に必ず「固定資産税評価額」を売主または不動産会社に確認し、年間の固定資産税額を試算してください。 新築と中古では評価額の計算方法が異なり、新築優遇措置(住宅用地の軽減措置など)が終了した途端に税額が跳ね上がるケースもあります。また、物件を複数保有している場合は、年間の固定資産税総額を一覧化したエクセルシートを必ず作成し、月次収支とは別に「年間収支ベース」で管理することが不可欠です。

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まとめ:還付金に喜ぶ前に、あなたがすべきこと

確定申告の還付金は、節税の「成果」ではありません。払いすぎた税金が返ってきただけであり、その多くは固定資産税・修繕費・空室損失によって再び吸収されます。

この記事でお伝えしたことを、最後に整理します。

① 還付金の正体を理解する 損益通算による還付金は「税の精算」であり「利益」ではない。還付金は固定資産税の積立金として管理する。

② 年間収支で判断する習慣をつける 月次収支だけ見ていると固定資産税・大規模修繕という「年1回の刺客」が視野から消える。必ず年間トータルで収支を把握する。

③ 節税は「おまけ」と位置づける 節税を主目的にした物件購入は、キャッシュフローの出ない物件を掴む最短ルートです。「節税効果ゼロでもプラスになるか」を判断基準にする。

④ デッドクロスを視野に入れた長期計画を立てる 減価償却が切れた後の収支シミュレーションを必ず確認する。これを開示しない業者との取引は慎重に。

私は13年間、2億円超の負債を抱えながら、還付金を固定資産税に充て、修繕費を家賃相殺で乗り越え、リスケで元金を先送りしながら生き延びてきました。その経験から言えることはただ一つです。

不動産投資を「節税ツール」として買うのは、罠です。キャッシュフローと出口戦略が設計できている物件だけを、事業として買ってください。

不動産投資は「事業」です。還付金に一喜一憂している間は、まだ事業家の視点が身についていません。

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また、節税の「繰延」構造を深く理解するために、デッドクロスの仕組みと対策を解説した以下の記事も合わせてお読みください。年間収支の計算と並行して確認することで、5〜10年後のリスクを今から手当てできます。

デッドクロスの恐怖|帳簿黒字なのに手元にお金がない「黒字倒産」のからくり

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