- 「相続税対策になりますよ」と、アパートや小口化の商品を勧められた
- 「年内に買えば間に合います」と言われて、急いだほうがいいのか迷っている
- 親が最近アパートを建てた。相続のときにどうなるのか気になる
「相続税対策になります」と言って、アパートや不動産の小口化商品を勧める営業があります。2027年1月から相続税の計算の仕方が変わるため、最近は「年内に買えば間に合います」と急がせる話も聞くようになりました。
私も以前、節税になると言われて物件を勧められたことがあります。そのときは「そうなんだ」と思いました。営業の言葉を、そのまま受け取っていたのです。
私は地方在住・大家歴13年の現役サラリーマン大家です。3棟38室を運営しています。いま手元に残る税引前キャッシュフロー(家賃からローン返済や経費を引いて残るお金)は月30万円。これを5年間継続できています。
結論から言うと、「年内に買えば間に合う」は成り立ちません。2027年以降に相続が起きれば、亡くなる前5年以内に買った賃貸物件は、今年買ったものも新しいルールの対象になります。
この記事では、何が変わるのか、誰に影響があるのかを、できるだけかみくだいてまとめます。会社員が手取りを増やすための節税は、今回の話とは分けて考えてかまいません。その理由も書きました。
節税になるとワンルームを勧められている方は、買う前に、その物件が割高でないかを売り手以外に見てもらうと安心です。
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2027年1月から、賃貸物件の相続税の評価が変わる

相続税は、亡くなった人が持っていた財産の値段(評価額)をもとに計算します。賃貸に出しているアパートやマンションは、これまで実際の売買価格よりかなり低く評価されることが多く、それが「相続税対策になる」と言われてきた理由です。
2025年12月に公表された令和8年度の税制改正の大綱で、このしくみが見直されることになりました(三菱UFJ信託銀行のまとめ)。2027年1月1日以後の相続から、亡くなる前5年以内に買ったり建てたりした一定の賃貸物件は、買った値段をもとに地価の動きなどを考えて計算した額の8割で評価されます。
つまり、これまでのように買った値段よりずっと低い評価にはならず、買った値段に近い評価になります。相続税を減らす効果は、大きく小さくなります。
もう1つ、任意組合型などの不動産の小口化商品は、いつ買ったかに関係なく、実際の取引価格に近い額で評価されることになりました。小口化商品を相続税対策として持っている人は、今後の扱いを確かめておく必要があります。
なお、大綱は改正の方向を示したものです。どの物件が対象になるかの細かい範囲は、これから示される国税庁の通達で決まります。
「年内に買えば間に合う」が成り立たない理由

新しいルールが使われるのは、2027年1月1日以後に起きた相続です。そのときに、亡くなる前5年以内に買った物件かどうかを見ます。
たとえば、2026年11月にアパートを買い、2028年に相続が起きたとします。買ってから2年しかたっていないので、5年以内に入り、新しいルールで評価されます。今年中に買ったかどうかは関係なく、相続が起きるまでに5年たっているかどうかで決まります。
例外として、5年以上前から持っている土地に、通達で決まる日までに建てた家は、この見直しの対象から外れます。古くからの地主が自分の土地にアパートを建てるケースです。物件ごと買う場合とは扱いが異なります。

「年内に買えば間に合う」と言われたら、何に間に合うのかを担当者に聞いてください。2027年以降の相続で5年以内なら対象になる、と説明できない担当者の話は、いったん持ち帰って大丈夫です。
会社員が手取りを増やす節税は、今回の話とは分けて考える

今回見直されるのは、相続税の評価です。会社員が物件を買い、減価償却を経費にして所得税を減らす節税とは、しくみが異なります。
会社員が手取りを最大にするための節税は、私はまあ、いいんじゃないかと思っています。給料から引かれる税金が減れば、その分は手元に残ります。使える制度を使うのは、悪いことではありません。
ただし、節税は家賃+売値-経費>買値の式の外にある話です。物件の損得を決めるのは買値で、節税の効果で割高な買値は取り返せません。売るときには税金がかかるので、それまで含めて計算すると、節税で得したはずの分が小さくなることもあります。
高年収の人向けの節税の考え方は、武蔵コーポレーションの検証記事で詳しく書いています。
影響を受けるのは誰か

影響が大きいのは、次のような人です。
- 高齢になってから、相続税対策としてアパートを買ったり建てたりする人
- 不動産の小口化商品を、相続税対策として持っている人
- そうした物件を親から相続する予定の家族
親が最近アパートを買ったり建てたりしているなら、その物件をいつ、いくらで手に入れたのかを家族で確かめておくと安心です。売買契約書や工事の契約書が、評価の手がかりになります(全国賃貸住宅新聞)。
一方、会社員が家賃収入を目的に買った物件は、相続のときに5年以内でなければ、これまでどおりの評価です。持ち続ける前提で買っている大家にとっては、大きく慌てる話ではありません。
大家が今やる3つのこと

①勧められた物件は、節税の効果を抜いて計算する
節税や相続税対策の話を外して、家賃・売値・経費・買値だけで物件の損得を計算します。それで成り立たない物件は、節税の効果があっても買わない、と決めておけば迷いません。
②親の物件は、買った日と値段が分かる書類をそろえる
売買契約書、工事の請負契約書、決済の書類をまとめておきます。新しいルールで評価するときには、買った値段がもとになるからです。
③相続が近いなら、税理士に書類を見せて試算してもらう
細かい範囲は、これから出る通達で決まります。相続が近い家族がいる場合は、相続税に詳しい税理士に、物件ごとの取得日と取得価額の書類を見せて、新しいルールでいくらになるかを試算してもらってください。
まとめ|節税の話の前に、買値で判断する

- 2027年1月以後の相続から、亡くなる前5年以内に買った・建てた一定の賃貸物件は、買った値段をもとにした評価になる
- 「年内に買えば間に合う」は成り立たない。相続が起きるまでに5年たっているかで決まる
- 小口化商品は、いつ買ったかに関係なく、取引価格に近い評価になる
- 会社員が手取りを増やす所得税の節税は、今回の見直しとは別の話
- どんな節税も、割高な買値は取り返せない。節税抜きで成り立つかで判断する
節税の話は、聞くとつい「そうなんだ」と思ってしまいます。私もそうでした。だからこそ、勧められたら一度、節税の話を外して計算してから決めてください。
ワンルームを節税になると勧められている方は、その物件が割高でないかを、売り手ではない人に見てもらうのが早道です。
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