新築アパートを検討すると、ほぼ必ずセットで出てくるのが「サブリース(家賃保証)」です。「空室でも家賃が保証されるので安心ですよ」と。
でも13年・38部屋・約2億円の負債を抱えて経営してきた私は、はっきり確信しています。サブリースは「安心」ではなく「リスクの先送り」だと。しかも私は、あのかぼちゃの馬車事件に、他人事ではない形で巻き込まれた側の人間です。

「家賃保証」という言葉ほど、大家を油断させるものはありません。保証しているのは業者です。業者が損する状況になったら、その保証は真っ先に見直されます。
かぼちゃの馬車事件——そして私にも、スルガから調査の連絡が来た

「かぼちゃの馬車」は、女性向けシェアハウスをサブリース(家賃保証)で運営する事業でした。「30年家賃保証」をうたって多くの人がスルガ銀行のフルローンで購入。ところが運営会社が破綻し、家賃保証は止まり、残ったのは巨額のローンだけ。多くのオーナーが人生を狂わされました。
私はスルガ銀行で借りていた——だから調査対象になった
私はこの事件を、ニュースとして眺めていたわけではありません。松本と甲府の物件を、スルガ銀行のローンで買っていたからです。事件が問題になったとき、スルガから「あなたの物件に問題はないか調査します」という連絡が来ました。
結果的に私の物件は大きな問題にはなりませんでした。ただ、スルガ側から特別な配慮があったわけでもありません。当時の私は一人で、どこに相談していいかも分からなかった。今思えば弁護士にでも相談すればよかったのかもしれません。

あのとき痛感しました。大きな借金は、自分の判断だけでなく、銀行や事件の余波でいつでも揺らぎます。かぼちゃの馬車は、私にとって対岸の火事ではありませんでした。
この経験が、私がサブリースや「保証」という言葉を信用しない、一番の理由です。
サブリースの「家賃保証」に潜むからくり

サブリースの仕組みを冷静に分解すると、”保証”の正体が見えてきます。
- 保証されるのは満室家賃の80〜90%:残り10〜20%が業者の取り分。空室リスクの対価としては割高
- 敷金・礼金・更新料は業者のもの:オーナーには入らない
- 契約期間中でも「家賃の見直し(減額)」ができる:これが最大の罠。保証額は固定ではない
なぜ業者の減額要求は通ってしまうのか
サブリースでは、オーナーが貸主、サブリース会社が借主という構造になります。すると借主であるサブリース会社は借地借家法で保護される。借主を守る法律が、ここでは”業者”を守る側に働くのです。
だから「保証家賃を下げてくれ」という要求を、オーナーはなかなか拒めない。「30年保証」の”保証”は、金額を約束するものではなかった——これがサブリースの本質です。
私の”空室保証”体験——「1年で決まる」が、5年決まらなかった

サブリースそのものではありませんが、私は似た「保証」に痛い目を見ています。甲府のマンションを買うとき、店舗と看板の区画について「1年間の空室保証が付くので安心、1年経てばほぼ決まりますよ」と言われました。
結果は——店舗も看板も、5年以上決まりませんでした。想定6〜7万円だった賃料を3万円まで下げて、やっと決まった。「保証」や「すぐ決まる」という営業トークが、いかに現実と乖離するかを、身をもって学びました。

「保証があるから」「すぐ決まるから」は、契約させるための言葉です。その言葉が外れたとき、責任を取るのは大家一人です。だから最初から保証を当てにしない設計にします。
では、なぜ「一般管理(手数料5%)」が正解なのか

サブリースの代わりに私が基本とするのは、一般管理(管理手数料5%前後)です。空室リスクは自分で負う代わりに、家賃の大半が自分に入り、意思決定も自分でできます。
数字で比べると、どこで有利不利がひっくり返るかがはっきりします。
| サブリース | 一般管理(手数料5%) | |
|---|---|---|
| 満室想定家賃 | 100万円 | 100万円 |
| 業者への支払い | −15万円(15%) | −5万円(5%) |
| 手取り(満室時) | 85万円 | 95万円 |
| 空室率10%時の手取り | 85万円(変わらず) | 85.5万円 |
| 空室率20%時の手取り | 85万円(変わらず) | 76万円 |
正直に書きます。分かれ目は空室率10%前後です。それより満室に近ければ一般管理が有利、空室率が10%を超えると、この表の上ではサブリースが逆転します。「サブリースは常に損」という説明は、正確ではありません。
ただし、この表にはサブリースにとって都合の良い前提が1つ隠れています。「サブリース家賃85万円が、ずっと85万円のまま」という前提です。
サブリース契約には、多くの場合2年ごとの賃料見直し条項が入っています。空室が続く物件ほど、この見直しで保証賃料は下げられます。つまり「空室率が高いほどサブリースが有利」に見えるのは、保証賃料が据え置かれる間だけの話です。契約書の見直し条項と、減額を拒否できるかどうかを、契約前に必ず確認してください。
だから私の結論は「サブリースは損だから避けろ」ではありません。空室が増えたときに保証賃料が下がるなら、サブリースの利点はその瞬間に消える——だから最初から保証を当てにしない設計にする、ということです。項目ごとの比較はこちらです。
| 比較項目 | サブリース(家賃保証付) | 一般管理(手数料5%) |
|---|---|---|
| 管理費率 | 家賃の15〜30%(表面上は「安い」) | 家賃の5〜8% |
| 家賃保証の実態 | 定期的な「減額交渉」あり(拒否すると解約) | 保証なし(入居率次第) |
| 原状回復費用 | 業者負担が多い(コントロール不能) | 大家が業者を選べる |
| 賃料水準 | 市場賃料より10〜15%低く設定される | 市場賃料で設定可能 |
| 解約の自由 | 期間縛り・解約金が発生するケースあり | 通常は3〜6ヶ月の通知で解約可 |
もちろん一般管理は空室リスクを自分で負います。でもそのリスクは、良い管理会社を選び、空室対策を打つことでコントロールできます。「保証」で他人に預けて減額されるより、自分でコントロールするほうが、私は健全だと考えています。
すでにサブリース契約を結んでいるオーナーへ

もう契約してしまった場合でも、打つ手はあります。ただし借地借家法の関係で、オーナー側からの解約は簡単ではありません。感情的に動かず、正当事由・立退料・タイミングを踏まえて進める必要があります。
サブリースの解約方法と手順は、こちらに詳しくまとめています。

よくある質問

- Qサブリース契約中でも、家賃の減額を拒否することはできますか?
- A
拒否すること自体は可能ですが、それで問題が解決するわけではありません。
業者からの減額要求を断った場合、業者側は「賃料減額請求調停」を申し立てることができます。調停が不成立になれば訴訟へと発展し、最終的には裁判所が「相当賃料」を決定します。その間、あなたは時間・費用・精神力を消耗し続けることになります。
「拒否できる」と「有利に戦える」はまったく別の話です。減額要求が来た段階で、感情的に拒否するのではなく、すぐに不動産専門の弁護士に相談することが最善の対処法です。
- Q「サブリース新法(2020年)」が施行されたので、もう安全では?
- A
法律は「悪質業者への抑止力」にはなりますが、サブリースの構造的リスクを消したわけではありません。
2020年に施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」により、サブリース業者には契約前の重要事項説明義務や、不当勧誘の禁止などが課されました。これ自体は大きな前進です。
しかし、法律が整備されても「借地借家法第32条による賃料減額請求権」は業者側に残ったままです。契約を結んだあとのリスク構造は、根本的には変わっていません。「新法があるから安心」という言葉を業者が使ってきたら、むしろ警戒してください。
- Q管理が不安なので一般管理ではなくサブリースにしたい。初心者にはサブリースのほうが向いていますか?
- A
むしろ逆です。初心者こそ、サブリースを選ぶべきではありません。
「管理が不安だからサブリースで楽をしたい」という気持ちは理解できます。しかし、サブリースを選ぶことで、あなたは自分の物件の入居状況・修繕状況・収支の実態を業者に握られたまま経営を続けることになります。
不動産投資の失敗の多くは、「自分の物件の数字を把握していなかった」ことから始まります。初心者だからこそ、一般管理(手数料5%)を選んで、物件の実態を自分の目で確認しながら経験を積むべきです。「楽をしたい」と思ったとき、それは「リスクを先送りにしたい」と言い換えられます。事業家としての覚悟を、最初から持ってください。
まとめ——「保証」は他人に預けず、自分でコントロールする

- サブリースの「家賃保証」は金額を約束するものではない。契約中でも減額できる
- 借地借家法は”借主”であるサブリース会社を守る。だから業者の要求は通りやすい
- かぼちゃの馬車が証明した通り、保証は業者が破綻すれば消える。私もスルガ調査の当事者だった
- 基本は一般管理(手数料5%)。空室リスクは自分でコントロールする

保証という言葉に安心を求める気持ちは分かります。ですが、他人が保証してくれる安心は、他人の都合で消えます。自分でコントロールできるリスクだけ持ってください。それが13年の結論です。
元の記事に戻る
個別の対応を踏まえて、管理会社選びの基本に戻って確認しましょう。


コメント