入居者からの「お湯が出ません」という連絡は、大家にとって待ったなしの緊急事態です。真冬なら即クレーム、放置すれば退去にもつながる。そして給湯器の交換費用は、1台15〜25万円——決して軽くありません。
この記事では、給湯器の交換費用の相場、大家と入居者のどちらが払うのか、そしてその費用をどう準備しておくかを、13年・38部屋を回してきた実務目線で書きます。私自身、設備の修繕費で銀行に頭を下げるところまで追い込まれた経験があります。その話も正直に書きます。

設備は「忘れた頃」に、しかも「一番寒い日」に壊れます。慌てないために、費用と負担のルールを先に頭に入れておきましょう。
給湯器の交換費用の相場【タイプ別・号数別】

まず結論から。賃貸アパートで一般的なガス給湯器の交換は、工賃込みで10〜25万円が相場です。号数(お湯を作る能力)とタイプで変わります。
| 給湯器タイプ | 号数目安 | 本体価格 | 工賃込み総額 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ガス給湯器(給湯専用) | 16号 | 5〜8万円 | 10〜15万円 | 単身向け最安クラス |
| ガス給湯器(給湯専用) | 20号 | 7〜10万円 | 12〜18万円 | ファミリー向け標準 |
| ガス給湯器(追い焚き付き) | 20号 | 10〜15万円 | 15〜25万円 | 浴室追い焚きあり |
| エコジョーズ(省エネ型) | 20号 | 15〜20万円 | 20〜30万円 | 補助金対象・光熱費削減 |
| 電気温水器 | 370L〜460L | 15〜25万円 | 20〜35万円 | 深夜電力活用型 |
| エコキュート | 370L〜460L | 20〜40万円 | 30〜50万円 | ヒートポンプ式・補助金対象 |
単身向けの16号・給湯専用なら10〜15万円、ファミリー向けの24号・追い焚き付きなら20万円超が目安です。エコキュート(電気)は本体が高く30〜50万円かかるため、賃貸では都市ガス・LPガスの給湯器が選ばれるのが一般的です。
給湯器は耐用年数10〜15年の消耗品です。他の設備とあわせて、寿命と費用の全体像を押さえておきましょう。
| 設備 | 耐用年数の目安 | 交換費用の目安(工賃込み) |
|---|---|---|
| 給湯器(16号・20号) | 10〜15年 | 15〜25万円 |
| トイレ(ウォシュレット含む) | 10〜15年 | 8〜20万円 |
| 洗面台 | 15〜20年 | 10〜20万円 |
| ユニットバス(全体) | 20〜25年 | 60〜120万円 |
| 排水管(高圧洗浄) | 5〜7年(定期洗浄) | 3〜8万円/棟 |
| 排水管(更新工事) | 25〜30年 | 100〜300万円 |
給湯器の交換費用は大家と入居者どちらの負担か

ここが一番よく揉めるポイントです。原則はシンプルで、自然故障・経年劣化なら大家負担、入居者の故意・過失なら入居者負担です。
| 状況 | 費用負担者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自然故障・経年劣化による交換 | 大家(賃貸人) | 民法606条・国交省GL |
| 入居者の故意・過失による損傷 | 入居者 | 民法709条・契約書特約 |
| 入居者の持込設備 | 入居者 | 入居者所有物のため |
| 入居者が勝手に交換した場合 | 原則大家(事前合意なし→入居者持ち出しリスクも) | 事前書面合意が必須 |
給湯器は使っていれば必ず寿命が来る設備なので、大半のケースは大家負担になります。「入居者が壊した」と主張するには、大家側が過失を立証しなければならず、経年劣化との線引きは容易ではありません。
民法でも、貸主には賃貸物件を使用可能な状態に保つ修繕義務(民法606条)があります。お湯が出ない状態を放置すれば、この義務違反を問われかねません。「お湯が出ません」の連絡は、費用を惜しんで引き延ばしていい話ではない——ここは割り切りが必要です。

「直していいですか」と聞かれて「だめ」と言う選択肢は、実質ありません。だからこそ、払える準備をしておくことが全てなのです。
その費用、払えますか——修繕費は家賃の5〜10%を積み立てる

給湯器1台なら15万円。でも設備は一斉に寿命が来ます。同じ時期に建てられた物件は、給湯器もエアコンも同じ時期に劣化するからです。
数台が続けて壊れれば、あっという間に数十万円が飛びます。
私は設備の修繕費で、銀行に頭を下げた
偉そうに書いていますが、私自身、これで痛い目を見ています。松本と甲府の物件で受水槽系の設備が立て続けに問題を起こし、キャッシュフローが回らなくなって、銀行に1年間の元金返済の猶予(リスケジュール)を申し入れるところまで追い込まれました。
あのとき手元に修繕用のプールがあれば、銀行に頭を下げずに済んだはずです。修繕費は「怖いもの」ではなく、積んで制御するコスト——この教訓は、屈辱と引き換えに学びました。

修繕積立は地味です。ですが、これを怠った月にかぎって設備は壊れます。銀行に頭を下げるより、毎月コツコツ積むほうがずっと楽です。
受水槽の交換費用そのものについては、こちらに詳しく書いています。

築年数が上がるほど、積立率を上げる
目安は家賃収入の5〜10%を毎月、修繕専用口座にプールすること。そして築年数が上がるほど率を高めます。
| 築年数 | 推奨積立率 |
|---|---|
| 築0〜10年 | 家賃収入の5% |
| 築10〜20年 | 家賃収入の7% |
| 築20〜30年 | 家賃収入の10% |
| 築30年超(RC) | 家賃収入の10〜15% |
ポイントは専用口座に分けて、他の用途には絶対に手をつけないこと。運転資金と混ざると、いざという時に「あるはずの修繕費」が消えています。
交換業者の選び方と、覚えておきたい2つのこと

相見積もりで「言い値」を避ける
給湯器交換は業者によって数万円変わります。管理会社経由は楽ですが中間マージンが乗ることも多く、相見積もりを取るだけで数万円下がることは珍しくありません。緊急時ほど言い値になりがちなので、日頃から複数の当てを持っておくと強い。
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①故障は「火災保険」で戻せる場合がある
経年劣化の給湯器故障は保険対象外ですが、落雷や凍結破裂など突発的な原因なら火災保険が下りることがあります。原因を確認せず自腹で払う前に、管理会社に「保険で申請できないか」を一言。申請の実務はこちらにまとめています。

②交換費用は「経費」か「資本的支出」かで手残りが変わる
給湯器交換のような修繕は、一括で経費にできるか、資本的支出として数年で償却するかで、その年の手残りが変わります。おおむね20万円が分岐点です。詳しくはこちらで。

給湯器のような専有部の設備と違い、屋上防水は金額の桁が変わります。雨漏りの原因の見分け方と、防水工事の㎡単価の相場はこちらにまとめました。

まとめ——給湯器交換は「制御できるコスト」にできる

要点です。
- 給湯器の交換費用は工賃込み10〜25万円(エコキュートは30〜50万円)。耐用年数は10〜15年
- 自然故障・経年劣化は大家負担が原則。「お湯が出ない」は民法上も放置できない
- 設備は一斉に壊れる。家賃の5〜10%を専用口座に積む。築古ほど率を上げる
- 緊急時ほど相見積もり。突発故障は火災保険、税務は経費/資本的支出の判断を忘れずに

お湯が出ない連絡は防げません。でも「払える状態」で受けるか、慌てて銀行に走るかは、日頃の積立で決まります。
私は後者で痛い目を見ました。同じ轍は踏まないでください。
よくある質問|給湯器の交換費用・負担に関するQ&A

- Q修繕費の積立は、いつから始めればいいですか?物件購入後でも間に合いますか?
- A
購入した瞬間から始めてください。「間に合う・間に合わない」ではなく、1ヶ月でも早く始めた方が有利です。
よくある失敗が、「まだ築浅だから修繕は当分ないだろう」と積立を後回しにするパターンです。しかし突発的な設備故障は築年数に関係なく起きます。購入直後に給湯器が壊れた、入居者の過失で設備が損傷した、という事例は珍しくありません。
物件を取得したその月から、家賃収入の5〜10%を修繕費専用口座に自動振替する仕組みを作ることが、最初にやるべきことです。「積立額が少ない時期に大きな修繕が来たら?
」という不安については、そのリスクを織り込んだうえで購入時の手元資金を厚めに持っておくことが前提です。修繕積立と手元資金の確保は、セットで考えてください。
- Q修繕費の積立をしていると、帳簿上は黒字なのに手元にお金が残りません。これは正常ですか?
- A
正常です。むしろそれが健全な不動産事業の姿です。
不動産投資の収支計算でよく使われる「表面利回り」や「FCR(総収益率)」は、修繕費を織り込んでいないケースがほとんどです。業者が提示する収支シミュレーションも、修繕費を低く見積もっているか、完全に省略していることが多いです。
帳簿上の黒字と手元キャッシュの乖離は、修繕積立をきちんとしている証拠です。 逆に「毎月しっかり手元に残る」という状態は、修繕費の積立ができていないか、近い将来に大きな出費が来ることへの備えができていない危険なサインです。
不動産投資は「毎月の手取りを最大化するゲーム」ではなく、「長期にわたって事業を存続させるゲーム」です。修繕積立によって手元が薄くなることを、コストではなく「事業を守るための投資」と捉え直してください。
- Q修繕業者への支払いは、なるべく安く抑えるべきですか?相見積もりは必須ですか?
- A
相見積もりは必須ですが、「最安値を選ぶ」ことが正解とは限りません。
修繕費を抑えたい気持ちは当然ですが、安さだけで業者を選ぶと、後からより大きなコストが発生するリスクがあります。 私自身、受水槽の修繕で「一部修理で安く済ませよう」とした結果、業者から「突貫修理では保証できない」と言われ、結局全交換になった経験があります。最初から全交換を前提に複数社に相見積もりを取っていれば、もう少し費用を抑えられた可能性がありました。
相見積もりで確認すべきポイントは「金額」だけでなく、「工事範囲の根拠」「保証期間」「アフターフォローの体制」です。最安値の業者が最も狭い工事範囲を提示していることは珍しくありません。
また、修繕費は火災保険で賄える可能性がある工事かどうかを、見積もりを取る前に確認する習慣をつけてください。保険適用できる工事を自費で払ってしまう大家さんが、非常に多くいます。
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個別の対応を踏まえて、管理会社選びの基本に戻って確認しましょう。


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