先に、この記事の結論を正直に書いておきます。
私はこの13年で、保険に3回救われました。仙台の地震、松本の強風、甲府の台風。どれも申請したら通りました。
でも同時に、こうも言わなければフェアではありません。私は火災保険を、一度も比較せずに入りました。銀行と不動産会社に言われるがまま、出てきた見積もりにそのまま署名しただけです。

「買うときにほぼ勝負はついている」と私はいつも言っています。物件はストレスをかけて計算して買ってください、と。なのに保険だけは完全に人任せでした。矛盾していますね。
それでも3回助けられたのは、運もあります。ただ、運だけではありません。火災保険は「知って、使う」ものだと分かっていたから、被害が出たときに申請という発想が出た。多くの大家は、そこで泣き寝入りします。
この記事では、火災保険が実際どこまで下りるのか、申請をどう通すのか、そして誰に頼むべきかを、3回申請して3回通した経験から書きます。加入時に手を抜いた私だからこそ言える、失敗込みの実務です。
火災保険は「火事」の保険ではない — 台風・雪・落雷まで下りる

最初に、多くの大家が損をしている一番の理由を書きます。「火災」保険という名前のせいで、火事のときしか使えないと思い込んでいることです。
実際には、火災保険がカバーする範囲はこれだけ広い。私が実際に下りたのも、3回とも火事ではありませんでした。
| 補償の種類 | 主な対象となる被害の例 |
|---|---|
| 風災・ひょう災・雪災 | 台風・突風によるフェンス倒壊、屋根材の飛散、雪の重みによる破損 |
| 水災 | 洪水・土砂崩れによる床下・床上浸水 |
| 落雷 | 落雷による電気系統・設備の損傷 |
| 破損・汚損(偶発的事故) | 入居者の過失によらない突発的な破損(共用部ガラスの破損など) |
| 水濡れ | 上階からの漏水による損害 |
| 盗難 | 設備の盗難・建物への損壊 |
見ての通り、台風・突風・雪・落雷・上階からの漏水まで対象です。屋根材の飛散、フェンスの倒壊、共用部ガラスの破損——大家が「修繕費」として自腹を切っているものの多くが、本当は保険で戦えた被害です。

雨漏りも、原因が台風や強風なら火災保険の対象になり得ます。「経年劣化か、災害か」——ここが分かれ目です。
雨漏りの原因の見分け方については、こちらで詳しく書いています。

ただし2つだけ注意 — 水災特約と、免責金額
広い補償範囲にも、つまずきポイントが2つあります。
1つは水災。洪水や土砂崩れによる浸水は、基本の火災保険に含まれず、水災特約を別途つけていないと下りないことが多い。ハザードマップで浸水リスクのある物件なら、ここは要確認です。
もう1つが免責金額(自己負担額)です。契約によっては「1事故につき◯万円は自己負担」と決まっていて、被害額がその金額を下回ると、申請しても1円も下りません。小さな破損で申請して、免責に届かず徒労に終わる——これは意外とよくある失敗です。申請前に、自分の証券の免責金額を一度見ておいてください。
実録|私が火災保険・地震保険に救われた3回

きれいごとではなく、実際に何が起きて、どう通ったかを書きます。
①仙台・シノケンの新築 — 地震で壁と土台にひび
東北は地震が多い。鳥取に住みながら、東北のニュースが出るたびにヒヤッとします。あるとき大きな地震で、建物の壁と土台にひびが入りました。
このとき効いたのが地震保険です。厳密に言うと、地震による損害は火災保険では下りず、地震保険でしか下りません。別物です。私は加入していたので、適用されました。

ここ、非常に大事です。地震は火災保険では1円も出ません。地震保険は火災保険とセットでしか入れません。入っていなかったら仙台のひびは全額自腹でした。
②松本の一棟アパート — 強風で建物が壊れた
風の強い日に、アパートの一部が壊れました。管理会社に相談して火災保険を申請したら、通りました。
③甲府のマンション — 台風で窓ガラスが割れた
風の強い日、たしか台風だったと思いますが、窓ガラスなどが割れました。これも申請したら結構な額が通りました。
正確な金額はもう記録が手元にありませんが、「これは助かった」と思える額でした。金額を盛るつもりはないので、「結構な額」とだけ書いておきます。
この3回に共通しているのは、どれも「自然災害」で、原因がはっきりしていたことです。逆に言えば、経年劣化が原因のものは1件も通っていません。ここが申請の分かれ目です。
火災保険の申請を通す方法【5ステップ】決め手は写真と見積もり

申請が通るかどうかは、ほぼ「証拠の質」で決まります。保険会社は現地を見ずに書類だけで判断することも多いので、書類が弱いと、正当な被害でも否認されます。
- まず否認の理由を書面でもらう。「経年劣化と判断した」など、根拠が必ずあります
- その根拠に反論できる材料を足す。撮り直した写真、原因を明記した別業者の見積書、被害当日の気象データ(いつ台風・強風があったか)など
- それでも折り合わなければ、各保険会社が案内しているそんぽ相談・指定紛争解決機関(そんぽADR)に相談する
ポイントは、「経年劣化」とされた被害を「災害が原因だ」と示せる客観的な証拠を足せるかです。感情で抗議しても動きません。ここでも効くのは、結局写真と見積もりと事実です。
申請は誰に頼むべきか — 「無料で直せます」の電話は切っていい

ここで、必ず知っておいてほしい罠があります。
「保険を使えばタダで直せます」という営業電話
私のところにも、こういう電話が来たことがあります。「火災保険を使えば無料で修理できますよ」という、いわゆる申請サポート業者です。
私は即座に断りました。理由は単純で、
- 成功報酬として保険金の30〜50%を抜かれることがある
- 契約を途中で解約すると高額な違約金を請求される例がある
- 中には被害を誇張・でっち上げて申請させる業者もいる。これは保険金詐欺で、罪に問われるのはオーナー本人です

ここは絶対に間違えてはいけません。誇張して申請したら、責任を問われるのは業者ではなくあなた自身です。うまい話には裏があります。
見分け方と、自分で申請する手順はこちらに詳しくまとめています。

正解は「管理会社に任せて、自分は署名する」
では誰に頼むか。答えは管理会社です。有料のサポート業者は要りません。
正直に打ち明けると、甲府の申請で私がやったことは、ほとんどありません。管理会社から連絡を受け、「申請でお願いします」と伝え、出てきた書類に署名した。それだけです。
これは手抜きではなく、意図した選択です。私は鳥取にいて、物件は甲府。現地の被害を一番よく分かっているのは管理会社で、業者との段取りも彼らのほうが速い。オーナーの仕事は、現場を仕切ることではなく、早く報告を受けて即断し、署名すること。ここを勘違いして自分で抱え込むと、かえって遅くなります。

遠隔で13年やってきて分かったのは、管理会社といかに早く気持ちよく連携するかが全てだということです。申請もそれと同じです。丸投げではなく、信頼して任せます。
管理会社との付き合い方そのものについては、こちらで書いています。

正直に言う — 保険は万能ではない。修繕費の大半は自腹だった

ここまで「保険は使え」と書いてきましたが、保険で全部が救われるわけではありません。むしろ現実は逆です。
私がこの13年で払ってきた大きな修繕費を並べると、保険が効いていないものばかりです。
- 松本の受水槽の全交換で150万円。「保証はできません」と言われ、家賃と相殺して払った
- 甲府の水タンクで200万円。修繕費を聞いて目の前が真っ暗になり、1年かけて家賃相殺でしのいだ
- 甲府はインターホン・風呂のドア・換気扇・トイレの漏電と故障が止まらず、毎回「家賃相殺で」と答え続けている
- 松本の雨受けのひさしは、今もお金がなくて直せていない
これらは経年劣化なので、保険では1円も下りません。保険で戦えるのは、あくまで火事・災害・突発的な事故だけ。日々すり減っていく修繕費は、自分で積み立てるしかないのです。
だから結論はこうなります。保険は「災害の一撃」から守ってくれる。でも「経年の消耗」からは守ってくれない。両方に備えて、はじめて経営が回ります。
修繕費をどう積み立てるかは、こちらにまとめました。

最後に — 加入時に手を抜いた私からの、たった一つのお願い
冒頭に書いた通り、私は火災保険を比較せずに入りました。3回助けられたので結果オーライですが、今の補償内容が物件の実態に合っているかは、正直、把握しきれていません。
あなたには同じ後悔をしてほしくない。請求のしくみを理解した今こそ、そもそもの補償が足りているか・保険料に無駄がないかを一度だけ確認してください。申請してから「補償が足りなかった」と気づくのが、一番つらいパターンです。
火災保険の申請に関するよくある質問

- Q火災保険の申請は、被害発生からどのくらいの期間内にしなければなりませんか?
- A
多くの火災保険では、保険法上の時効は3年とされています。ただし、これは「3年以内ならいつでもよい」という意味ではありません。時間が経てば経つほど、「今回の事故が原因の損傷である」という立証が難しくなります。特に台風・風災の場合、気象データと被害発生時期の照合が重要な判断材料になるため、被害を確認したらできる限り早く第一報を入れることを強くお勧めします。 「まあ後でいいか」が、申請機会の消滅につながります。
- Q入居者がいる状態でも、火災保険の申請・修繕はできますか?
- A
できます。火災保険はオーナーが建物に対してかける保険であり、入居者の有無は申請の可否に影響しません。ただし、修繕工事を行う際には入居者への事前説明と日程調整が必要です。共用部の工事であれば比較的スムーズですが、専有部に関わる工事の場合は入居者の協力が不可欠です。管理会社を通じて丁寧に説明・調整することが、入居者トラブルを防ぐうえでも重要です。
- Q火災保険を何度も申請すると、保険契約を打ち切られることはありますか?
- A
これは非常に重要な質問です。結論から言うと、正当な事故による申請を繰り返すこと自体は、直ちに契約解除の理由にはなりません。 ただし、申請頻度が極端に高い場合や、損害の原因に不自然な点がある場合、保険会社が更新を拒否したり、次回更新時に保険料が引き上げられるケースがあることは事実です。あくまで「正当な損害に対して正しく申請する」という原則を守ることが前提です。申請サポート業者に誘導されて不正申請を繰り返すことは、契約解除・保険詐欺認定という最悪の結果を招きます。正当な申請を、正しい手順で行うことが、長期的に保険を活用し続けるための唯一の道です。
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まとめ — 火災保険は「知っている大家」だけが使える防衛ツール

最後に要点をまとめます。
- 火災保険は火事だけでなく台風・強風・雪・落雷・漏水まで対象。多くの大家がこれを知らずに自腹を切っている
- 地震だけは火災保険では下りない。地震保険にセットで入っておく
- 申請の決め手は写真と見積もりの質。直す前に撮る。原因を特定してから動く
- 「無料で直せます」の申請サポート業者は切ってよい。頼むなら管理会社。オーナーは早く報告を受けて署名するのが仕事
- 保険は災害には効くが、経年劣化には効かない。日々の修繕費は自分で積み立てる

保険は「入って終わり」ではありません。被害が出た瞬間に申請を思い出せるかで、手元に残るお金が変わります。悩むくらいなら、まず管理会社に相談してください。
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個別の対応を踏まえて、管理会社選びの基本に戻って確認しましょう。


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