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イールドギャップとは?「金利との差」で計算してはいけない理由を38室大家が解説

イールドギャップの真実・金利との差で計算してはいけない理由を38室大家が解説 【STEP2】買う

みなさん最近、「イールドギャップ」という言葉をやたら耳にしませんか。株高のせいでしょうか。

株や投資信託が上がるほど、「借りたお金の金利」と「運用の期待リターン」の差が意識されやすくなります。不動産でいうこの差が、イールドギャップです。利回りと借入コストの差が大きいほど、儲かる仕組みだと説明されます。

ただ、実はイールドギャップが大きい物件ほど、危ないことがあります。

私自身、この指標で一度、判断を誤りかけました。

差は十分にありました。電卓を叩いても数字は合う。それなのに、通帳を見ると増えていない。なぜでしょう。電卓、一桁間違えた?

もう一度計算しました。合います。三回目も合う。四回目で、私は電卓のほうを疑い始めました。

悪かったのは残念ながら電卓ではありませんでした。私が使っていた計算式が間違っていたんです。

ただ、自分の計算のどこが間違っているのか分からず、その時はしばらく気持ち悪さだけが残りました。

のちほど学習してわかったこと——理由は単純明快でした。多くの場面で使われているイールドギャップの計算式には、融資期間が入っていないのです。

この記事は、イールドギャップという言葉は聞いたことがあるが、結局どう使えばいいのか腑に落ちていない人のための記事です。私は鳥取在住・大家歴13年・38室・借入2億円超の現役サラリーマン大家。先に結論:金利との差で計算するイールドギャップは、判断材料として不完全です。使うなら「ローン定数K%」との差で見てください。理由をこれから説明します。

イールドギャップとは何か(まず教科書どおりの説明)

イールドギャップ(Yield Gap)は、物件の利回りと、お金を借りるコストの差です。借りた金より物件が稼ぐほうが大きければ、その差額が自分の取り分になる。考え方自体はまっとうです。

問題は、この「差」の測り方が世の中で3種類くらい混在していることです。

計算式よく使われる場面信頼度
表面利回り − 借入金利販売資料、営業トーク使ってはいけない
実質利回り(FCR) − 借入金利解説記事の多くまだ足りない
実質利回り(FCR) − ローン定数K%実務これを使う

下にいくほど正確になります。そしていちばん上の式が、いちばんよく目に入る。ここが厄介なところです。

なぜ「金利との差」では足りないのか

金利は、借りたお金にかかる利息の率です。しかしあなたが毎月銀行に払うのは、利息だけではありません。元金も一緒に返しています。

つまり、実際に出ていくお金の重さを決めるのは金利だけではなく、「何年で返すか」です。同じ金利でも、返済期間が10年と30年では、毎年出ていく額がまるで違います。

金利との差で計算するイールドギャップには、この融資期間という最大の変数が入っていません。だから数字上は健全に見えるのに、手元にお金が残らないという事態が起きます。

金利だけ見て安心しないでください。銀行に毎月いくら持っていかれるか、それがすべてです。

正しい物差し「ローン定数K%」

実務で使うのは、金利ではなくローン定数K%です。

ローン定数K%=年間の元利返済額 ÷ 借入残高 × 100
「借りた額に対して、1年でどれだけ銀行に持っていかれるか」を示す割合です。利息だけでなく元金返済も含むため、融資期間の長短がそのまま反映されます

「また新しい用語か」と思った方。安心してください。これは電卓で一発で出ます。

銀行から渡される返済予定表に、年間の返済額がそのまま載っているはずです。

そしてイールドギャップは、本来こう計算します。

イールドギャップ = 実質利回り(FCR) − ローン定数K%

この数字がプラスなら正レバレッジ、つまり借りることで自己資金の効率が上がっている状態です。マイナスなら逆レバレッジ。借りたことが足を引っ張っている状態になります。

同じ金利でも結果が逆になる例

数字で見たほうが早いです。借入5,000万円・金利2.0%という、まったく同じ条件で融資期間だけを変えてみます。

融資期間10年融資期間30年
借入金利2.0%2.0%
年間の元利返済額約552万円約222万円
ローン定数K%約11.0%約4.4%
実質利回り(FCR)6%なら6 − 11.0 = −5.0%6 − 4.4 = +1.6%
判定逆レバレッジ正レバレッジ

金利は同じ2.0%です。「利回り6% − 金利2% = 4%」という、よく使われる計算では、どちらも同じ「イールドギャップ4%」になります。ですが実際は、片方は毎年お金が減り、片方は残ります。

これが「イールドギャップが大きい物件ほど危ないことがある」という冒頭の意味です。

築古で利回りが高い物件ほど、銀行は融資期間を短く切ってきます。利回りの高さと引き換えに、K%が跳ね上がる。表面の差だけ見ていると、この構造が見えません。

「2.5%あれば安全」は、どこまで信じていいのか

イールドギャップの目安として「2.5%以上」という数字がよく挙げられます。これ自体は間違いではありません。ただし融資期間25年以上が前提の話です。

前提が外れれば目安も外れます。融資期間15年の物件に、25年前提の基準を当てはめても意味がない。数字を覚えるより、前提条件のほうを覚えてください。

もうひとつ、指標が教えてくれないこと

ここまでは計算の話でした。最後に、計算では埋まらない話をします。

借入金利と利回りには、決定的な性質の違いがあります。

確定しているか誰が決めるか
借入金利・返済額契約で確定(変動金利なら上振れも)銀行
家賃収入・利回り確定していない入居者と市場
修繕費・空室確定していない建物と運

支払いは契約で確定しているのに、収入は誰も保証してくれない。イールドギャップという1本の数字は、この非対称を表現できません。引き算の左側と右側で、確からしさがまったく違うからです。

借りて何かに投資するという行為は、株でも不動産でも構造は同じです。コストは確定、リターンは不確定。

ただし不動産の場合、右側を揺らす要因が空室・修繕・金利上昇・災害と、株より格段に多い。だから同じ「差が3%あります」でも、意味の重さが違います。

私は2億円借りています。返済額は1円もブレません。ブレるのは家賃のほうです。

この非対称を腹に落とさないまま借りると、痛い目を見ます。

応用編:奨学金を一括返済するか、その金で投資するか

この考え方は、不動産以外でもよく議論になります。代表格が「手元の貯金で奨学金を一括返済すべきか、それとも投資に回すべきか」という問いです。

金利1.7%で借りているお金を返さずに、期待リターン5%と言われるものを買う。差は3.3%。これもまた、イールドギャップを取りにいく行為です。

まず自分の金利を確認する

話はそこからです。奨学金は種類によって金利がまったく違います。

種類金利(2026年時点)繰上返還の判断
第一種無利子急いで返す経済的な理由はない
第二種(利率見直し方式)1.700%(2026年2月時点)金利上昇に注意が必要
第二種(利率固定方式)2.5%前後返済も選択肢に入る水準

上限は年3%と決まっています。なお繰上返還そのものに手数料や追加の利子はかかりません。

第一種であれば、話はここで半分終わります。無利子のお金を急いで返す経済合理性は、基本的にないからです。

ここでイールドギャップの発想を持ち込むと、間違えます

「金利1.7%より期待リターン5%が上なら借りたまま投資すべき」——数字だけ見れば筋が通っています。ですが、不動産のイールドギャップとは決定的に違う点があります。

不動産投資ローン奨学金
借りたお金は今どこに物件という収益資産に変わっているすでに学費として使い切っている
借金が生む収入家賃収入があるない
K%(ローン定数)での判定成立する成立しない
返済を止める選択売却という出口があるない

不動産のイールドギャップが意味を持つのは、借りたお金が「稼ぐ資産」に姿を変えているからです。家賃という収入があるからこそ、それをK%と比べる意味がある。

一方、奨学金で借りたお金はもう手元にありません。学費として消えています。収入を生まない借金なので、K%と比べる対象がそもそも存在しないのです。

だから奨学金の判断は、ローン定数を持ち出さず純粋に「確定している金利」と「不確定な期待リターン」の比較で考えるのが正解です。

では結局どう考えるか

繰上返還は、「確実に、税金もかからず、金利ぶんのリターンが得られる運用」と言い換えられます。1.7%で借りているなら、返すことは確定1.7%のリターンです。

対する期待リターン5%は、あくまで期待値です。

確定1.7%と、不確定5%。この2つは同じ土俵の数字ではありません。本記事で繰り返してきた非対称が、ここでもそのまま出てきます。

2億円借りている人間が言うと説得力ゼロかもしれませんが、聞いてください。

私が借りているのは、家賃を生む物件に対してです。稼がない借金を抱えたまま投資に回すのは、同じレバレッジでも意味が違います。そこを混同しないでください。

判断の分かれ目は、数字より「その借金が、あなたの生活の選択肢を狭めているか」だと考えています。転職や独立をためらう理由になっているなら、期待値の差3.3%より、身軽さのほうが価値を持つ場面はあります。

逆に返済が生活を圧迫しておらず、値動きに動じない性格なら、無理に急いで返す必要もありません。正解は金利と性格の組み合わせで決まります。

結局、どう使えばいいのか

  • 表面利回り − 金利は使わない。販売資料でこの計算が出てきたら、自分で計算し直す
  • FCR − K%で見る。K%は「年間返済額 ÷ 借入残高」で、電卓ですぐ出せる
  • プラスかマイナスかを先に見る。大きさより符号。マイナスなら借りるほど損をしている
  • 目安の数字ではなく前提を見る。「2.5%以上」は融資期間25年以上の話
  • 右側(収入)が揺れたときを試算する。空室2部屋、金利1%上昇で符号が反転しないか

実際の計算は、配布している無料のExcelシートでまとめてできます。FCR・K%・イールドギャップ・DSCR・返済比率など、銀行が見る指標を一度に出せるようにしてあります。

【無料エクセル】不動産投資シミュレーション&利回り計算|銀行の6指標で危険物件を見抜く
不動産投資のシミュレーションが無料でできるエクセル(Excel)を配布しています。銀行実務のDSCR・LTVを自動計算し、業者の甘い試算では見えない「死ぬ物件」を見抜く判定シートです。シュミレーションのやり方が分からない初心者でも、数字を入れるだけで危険物件を可視化できます。

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よくある質問

38室を経営する現役大家
Q
イールドギャップは何%あれば安全ですか?
A

一般には2.5%以上が目安とされますが、これは融資期間25年以上を前提とした数字です。融資期間が短い物件では、この基準は成立しません。安全かどうかは「何%か」より「FCRがK%を上回っているか」で判断してください。

Q
なぜ利回りが高い物件ほど危ないことがあるのですか?
A

利回りが高い物件は築古であることが多く、銀行が融資期間を短く設定するためです。融資期間が短いとローン定数K%が上がり、利回りの高さを打ち消してしまいます。金利だけを見た計算では、この動きが見えません。

まとめ

イールドギャップは、使い方さえ間違えなければ役に立つ指標です。ただし金利との差で計算している限り、融資期間という最大の変数が抜け落ちます。

FCRとK%の差で見る。符号を先に確認する。目安ではなく前提を見る。

この3つだけで、販売資料の「イールドギャップ4%です」という説明に流されなくなります。

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融資条件の詳細を踏まえて、銀行選びの基本に戻って確認しましょう。

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