次の帰省のとき、ご両親と実家の話ができそうですか。
誰も住む予定のない実家。処分の話は縁起でもない気がして、つい先送りになります。でも「とりあえずそのまま」を選んでいる間も、実家は毎年お金を吸い続け、そして静かに値下がりを続けています。
持っているだけでお金が出ていき、売ろうにも買い手がつかない——そんな資産ではなく負債になった不動産は「負動産」と呼ばれます。この記事のテーマは、実家が負動産になりきる前に、処分・売却という選択肢を現実的に検討することです。
忙しい人のために、この記事の結論を先に置いておきます。
- 誰も住まない実家は「まだ値段がつくうち」に売却を検討する。待つほど値段と選択肢は減っていく
- 売った資金は運用に回し、住まいは賃貸——という身軽な出口がある
- 査定は3社以上。一番高い査定額を出す会社は、むしろ疑う
- 最初の一歩は、電話のかかってこないAI査定で「桁」を知ること。親との会話はそこから
私は昨年、13年持っていた地方の物件をひとつ、買った値段の2割で手放しました。この記事に書いてあることは、理屈ではなく、すべてその実体験から学んだことです。
この記事は「今すぐ売れ」とは言いません。選択肢と、そこに潜む罠を知ってから、親とフラットに話す——ゴールはそこです。

不動産は「持っているだけ」でもお金が出ていきます。それを私は13年分、請求書で知っています。
なお「まず今いくらなのかだけ知りたい」という場合は、電話のかかってこないAI査定で「桁」だけ見ておくのが手軽です。地方ほど精度は粗くなるので、売る・売らないの判断材料ではなく、あくまで入口の目安として。
「とりあえず持っておく」が、実家を負動産に変えていく

実家を空き家のまま持ち続けるコストは、思っているより具体的です。
- 固定資産税:住んでいなくても毎年課税されます。私は賃貸物件をいくつか持っていますが、この税金が毎年どれだけ重くのしかかるかは、身をもって知っています
- 維持費:電気・水道の基本料、庭木の手入れ、雪国なら雪下ろし。遠方なら帰省の交通費も実費です
- 劣化の加速:人が住まない家は、換気されず、傷みが早い。放置するほど「売れる状態」から遠ざかります
- 管理責任:塀の倒壊や屋根材の飛散で第三者に被害が出れば、所有者の責任です
つまり「とりあえず持っておく」は、何もしていないようでいて、毎年お金を払って、値下がりしていく資産を保有し続けるという「選択」です。そしてこの選択を続けた先にあるのが、維持費だけかかって売るに売れない負動産です。選ぶならせめて、値札を見てから選ぶべきです。
「実家を相続したくない」が現実的な感覚になった3つの理由

「親の家を継ぐのが当たり前」の時代は終わりつつあります。相続したくない、という声が珍しくなくなった背景には、はっきりした構造変化があります。
①不動産の二極化 — 「どこでも上がる」時代は終わった
これからの不動産は、上がるエリアと、下がり続けるエリアに分かれていきます。都心や駅近が上がる一方で、人口が減る地方の住宅地は買い手そのものが減っていく。今すでに価格が上がっていない実家は、この先上がる根拠がありません。
②金利の上昇 — 買い手の財布が縮んでいる
住宅ローン金利は上昇傾向にあります。これは売る側にも他人事ではありません。単純な計算ですが、5,000万円を35年ローンで借りる場合、金利が1%から2%に上がるだけで総返済額は約1,000万円増えます。買い手の予算が縮むということは、あなたの実家に付く値段も下がるということです。
③リフォーム費の高騰 — 「直して貸す」のハードルが上がった
資材費と人件費の高騰で、リフォームの見積もりは年々上がっています。「売らずに貸せばいい」という選択肢は今もありますが、貸せる状態にするまでの初期投資が昔の感覚より重くなっている。ここを甘く見て見積もりを取り、絶句する人は少なくありません。

「いつか売ろう」の「いつか」に、今より高く売れる根拠はあるでしょうか。——私はこの問いに答えられなかったので、売りました。
売ったお金はどうする?——「運用しながら賃貸」という身軽な選択肢

「売ったら住むところは?」——実家に将来自分が住む可能性を考えて、決めきれない人も多いと思います。ひとつの考え方として、売却資金を運用に回し、その取り崩しで賃貸の家賃を賄うというスタイルがあります。
まとまった売却資金を堅実に運用できれば、その運用益と少しずつの取り崩しで、家賃のかなりの部分を賄える計算になります。家という動かせない資産を、家賃を生む身軽な資産に組み替える——そういう発想です。
※もちろん運用に元本保証はありません。どのくらい取り崩せるかは運用次第であり、必ずリスク許容度の範囲内で行うことが大前提です。
賃貸に住む利点は、数字以外にもあります。
- 家計が一気にシンプルになる:固定資産税・修繕費・設備の故障対応は、すべて大家の負担です
- 広すぎる家からのサイズダウン:部屋数は減っても、築浅・駅近・管理の楽さと交換できます
- 次の世代に残すものが軽くなる:処分に困る家ではなく、分けやすく管理しやすい金融資産で残せます

固定資産税も修繕費も大家持ち——それがどれだけ大きいか、払っている側の私が保証します。
「一番高い査定額」を選んではいけない——私の家に届いた960万円のはがき

いざ売るとなったら、複数の会社に査定を出すことになります。そこで多くの人が、いちばん高い金額を提示した会社を選びます。これが、売却で一番よくある失敗です。
実際に届いた「相場の2倍」のはがき
私は兵庫県に古い区分マンションを持っています。相場はだいたい400万円台。そこにある日、「960万円で買いたい」というはがきが届きました。
相場の2倍です。悪い気はしません。でも、15年付き合いのある地元の不動産会社の社長に聞くと、答えはこうでした。
最初はそうやって高値で話に飛びつかせておいて、あとからじりじり値段を下げていくのが常套手段だよ。
高い査定額で気を引いて専任契約を結ばせ、他社に売れない状態にしてから「やっぱりこの価格では難しい」と下げさせていく。査定額は「売れる約束」ではなく、営業トークの場合がある——ここを知らないと、時間だけ失って結局安く手放すことになります。
3社以上に当たる本当の目的は「外れ値をあぶり出す」こと
複数社で比較する目的は、最高値を探すことではありません。相場から逸脱した査定を出してくる会社を、比較によってあぶり出すことです。3社が400万円台で1社だけ900万円なら、疑うべきは安い3社ではなく高い1社です。
地方の実家なら「地元の不動産屋」が結局いちばん強い

不動産は、道1本違うだけで値段が変わる、徹底的にローカルな商売です。全国チェーンの看板より、そのエリアの買い手と事情を知っている地場の業者のほうが、地方の物件では頼りになることが多い。
私がそれを信じているのには理由があります。13年前、不動産の右も左も分からなかった私は、いきなり5,000万円の店舗物件に飛びつこうとしました。それを「こんな物件やめとけ、銀行も貸さない」と止めてくれたのが、地元の不動産会社の社長でした。その人とは15年経った今も付き合いがあります。
200万円で買った物件は、40万円で売れた
その社長から最初に買ったのが、大学近くの学生向け中古ワンルーム、約200万円でした。その後、風呂とトイレを分ける工事に60万円、窓の改修に数十万円をかけています。
そして昨年、その物件を売りました。売値は40万円。買値の2割、かけたお金まで含めれば1割強です。
売ると決めた理由は3つあります。
- 実家が首都圏・関東・関西の都市部にある場合:一括査定で3社以上を比較。たとえば「いえカツ」は東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・大阪・兵庫の9都府県対応で、再建築不可や共有持分などの訳あり物件も査定対象です(先ほどの兄弟共有で困っているケースはここに相談できます)
- それ以外の地方にある場合:全国対応をうたう一括査定(たとえば「イエイ」)から試す。ただし地方は参加している不動産会社が少ないことがあります。査定が集まらなければ、その町の不動産屋を自分で探して、最低3社に直接当たる。Googleマップで実家周辺の不動産会社を調べて連絡するだけです。地味ですが、これが一番確実です
どちらのルートでも、やることは同じです。3社以上の査定を並べ、外れ値を疑い、対応が誠実な会社を選ぶ。
なお、投資用の物件の売り時については、こちらで詳しく書いています。

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売却時の仲介手数料をどう抑えるかも、手取りを左右します。
- ゼロチュー売却は怪しい?仲介手数料無料の裏側を検証(「無料」の条件と代償を調べました)
まとめ——負動産の処分は「親に売れと言う」ことではない
最後に、この記事で一番伝えたいことを書きます。負動産の処分と聞くと大ごとに聞こえますが、最初の一歩は拍子抜けするほど小さいものです。
実家の話を親に切り出すとき、「売ったほうがいい」から入ると、まず失敗します。親にとって家は資産である前に、人生の置き場所だからです。
だから最初の一歩はこれだけでいい。「この家、今いくらくらいなんだろうね」と、値段を知ることを提案する。売るかどうかはその後の話です。選択肢は、値段を知った人にしか生まれません。
- 「とりあえず持っておく」は毎年お金を払って値下がり資産を保有する「選択」である
- 二極化・金利上昇・リフォーム費高騰——待つほど有利になる要素は少ない
- いちばん高い査定額を選んではいけない。3社以上で外れ値をあぶり出す
- 地方の実家は地元の不動産屋に直接3社。都市部なら一括査定も使える(電話対策を忘れずに)
- まずはAI査定などで「桁」を知るところから。親との会話はそこから始まる

不動産は「買ったときに勝負がつく」——ずっとそう言ってきました。ですが親から受け継ぐ家だけは、買う瞬間を選べません。だから実家は「手放し方」で勝負がつくのです。
よくある質問

- Q空き家のままでも固定資産税はかかりますか?
- A
かかります。住んでいるかどうかに関係なく、所有している限り毎年課税されます。
さらに注意すべきは、管理されていない空き家が自治体から「特定空家」に指定されると、住宅用地の税優遇が外れて税額が数倍に跳ね上がる可能性があることです。「放っておいても税金は同じ」ではありません。放置は税金面でもリスクです。
- Q親が元気なうちにやっておくべきことはありますか?
- A
まず家の名義(登記)が誰になっているかの確認です。祖父母の名義のままになっているケースは珍しくなく、その場合は売る前に相続登記が必要になります。なお相続登記は義務化されており、放置にはペナルティもあります。
そしてもうひとつが意思確認です。所有者である親が認知症になると、原則としてその家は売れなくなります(成年後見制度を使う道はありますが、手続きも制約も重い)。「元気なうちに話しておく」は、感情の問題である以上に、実務の問題です。
- Q古くてボロボロの家でも売れますか?
- A
売れます。仲介で買い手がつかなくても、買取業者・解体して土地として売る・隣地の所有者に声をかけるなど、処分の道は複数あります。値段は下がりますが、ゼロになるわけではありません。
ただし、私の物件が200万円→40万円になったように、待つほど選択肢と値段は減っていきます。「売れるかどうか」を確かめるのが早いほど、打てる手は多く残っています。
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個別の判断材料を踏まえて、撤退判断の全体像に戻って確認しましょう。


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