「かぼちゃの馬車」と「みんなで大家さん」、同じ手口だと思っていませんか。
私自身、最初は同じカテゴリで見ていました。どちらも「高い利回り」を掲げ、行政処分や大規模な訴訟に発展し、多くの人が大きな損失を抱えた。ニュースの見出しだけを追うと、確かに似て見えます。
ただ、中身を一次資料まで遡って調べると、壊れ方がまったく違うことが分かりました。しかもこの違いは、次に同じような話が来たときの防御力に直結します。
「友人の借金の連帯保証人になる」(かぼちゃの馬車)のと「友人の会社に出資する」(みんなで大家さん)くらい違います。どちらも友人にお金を託す点は同じです。
ですが友人の事業が潰れたとき、連帯保証人は自分の財産を差し出してでも借金を肩代わりする義務を負います。出資者は、出したお金が返ってこないだけで、それ以上を背負わされることはありません。
ここが今回、一番強調したいところです。連帯保証人(実質的には借入の当事者)が負う金額は、自分の資産額を基準に決まるわけではありません。借りた金額と利息で機械的に決まる数字です。
だから、その金額が自分の全財産を上回ることも普通に起こりえます。物件を失ったうえに、資産をすべて処分しても返済が追いつかず、自己破産に至ったオーナーもいたとされています。
対して出資は、最悪でも出したお金がゼロになるところで止まるだけです。マイナスにはなりません。
かぼちゃの馬車が「青天井の負債」、みんなで大家さんが「出資額を上限とした損失」——この非対称こそが、両者の深刻さの本質的な違いです。
この記事は、「かぼちゃの馬車」「みんなで大家さん」という名前は知っているが、何がどう違うのか整理できていない人のための記事です。私は鳥取在住・大家歴13年・38室・借入2億円超の現役サラリーマン大家。
先に結論:どちらも「利回りの高さの裏付けが検証できない」という点は共通していますが、投資家が背負うリスクの形は正反対です。片方は借金が残り、片方は出資金の回収が難しくなる。理由をこれから、公表されている事実だけで整理します。
※本記事は報道・行政発表・裁判記録など公開情報にもとづく事実整理であり、独自の取材や断定的な犯罪認定を行うものではありません。数字は執筆時点(2026年8月)で確認できた範囲のものです。
結論:仕組みが根本的に違う
| かぼちゃの馬車 | みんなで大家さん | |
|---|---|---|
| 投資家の立場 | 物件の所有者(融資で購入) | 匿名組合の出資者(物件は所有しない) |
| お金の出どころ | スルガ銀行からの融資 | 自己資金による出資 |
| 壊れた場所 | サブリース賃料(家賃保証) | 分配金の原資(土地評価) |
| 投資家に残るもの | 物件と、多くの場合は多額の借金 | 出資金の回収請求権のみ |
| 行政・司法の対応 | スルガ銀行との民事調停 | 業務停止命令、民事訴訟で返還命令 |
かぼちゃの馬車で何が起きたのか
運営していたのは株式会社スマートデイズです。女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を、投資家に「利回り8%・30年家賃保証」という触れ込みで販売していました。
仕組みはこうです。投資家はスルガ銀行から融資を受けて物件を購入し、物件の所有者になります。スマートデイズがその物件を一括で借り上げ(サブリース)、入居者に貸し出し、投資家には保証した賃料を支払う——という建てつけでした。
保証されていたのは「賃料」であって「入居」ではなかった
実際の入居率は、報道によれば実質4割程度にとどまっていたとされます。本来なら家賃保証を続けられるはずのない稼働率です。
それでも保証が続いていたのは、建築費を相場の約2倍で投資家に購入させ、その差額を建築会社からスマートデイズへのキックバックとして受け取っていたためとされています。新しい物件(=新しいキックバック)を売り続けなければ、家賃保証の原資が尽きる構造でした。

家賃保証というのは、本来「誰かがその赤字を埋め続けられる限り」しか成立しない約束です。誰が埋めているのかを聞かずに保証という言葉だけ信じるのが、一番危険です。
融資書類の改ざんと、破綻後に残ったもの
加えて、スルガ銀行側でも投資家の預金通帳や資産状況を改ざんし、本来通らないはずの融資を通していたことが明らかになっています。
スマートデイズは2018年5月に経営破綻。家賃保証は止まり、投資家の手元には物件と、それを買うために組んだ融資だけが残りました。被害の規模は、当初対象となった257名・約440億円から、最終的には404名・約605億円まで拡大したとされています。
その後2020年3月、スルガ銀行との間で調停が成立します。不動産を投資ファンドに物納すれば、ローンの借入金を帳消しにするという内容でした(2021年にも追加の調停が成立)。「令和の徳政令」と呼ばれることもありますが、実態は物件を手放すことと引き換えの債務免除であり、無条件で救済されたわけではありません。
みんなで大家さんで何が起きたのか(起きているのか)
運営は都市綜研インベストファンド(ファンド運用)とみんなで大家さん販売(商品販売)、親会社は共生バンクです。かぼちゃの馬車とは法律の土台からして違います。
こちらは不動産特定共同事業法にもとづく「匿名組合出資」という仕組みです。投資家は物件を購入するのではなく、運営会社に出資し、事業から生まれる利益の分配を受ける権利を持つだけです。物件の所有権も、テナントへの直接の請求権もありません。
行政処分と、土地評価をめぐる問題
2024年6月17日、東京都と大阪府がそれぞれ、みんなで大家さん販売・都市綜研インベストファンドに対して業務の一部停止30日間を命じました。不動産特定共同事業法違反が理由で、リスク説明の不足や、開発許可を得ていない土地を書類に記載していた点などが指摘されています。大阪府の処分をきっかけに、新規の募集は行われていません。
さらに2025年12月の報道では、親会社の共生バンクが投資対象の土地を、実勢価格の数十倍から百数十倍という水準で評価し、それをもとに出資を集めていた疑いが明らかになりました。分配金の原資そのものが、最初から成立していなかった可能性を示す内容です。
集団訴訟と、相次ぐ全額返還命令
出資者による集団訴訟は2025年後半から拡大し、複数の訴訟を合わせると約2,500人・請求総額約230億円規模に達しています。
2026年3月26日、大阪地裁は原告3名に対する全額返還を命じる判決を出しました。これが実質的な初判決です。
その後も同様の判決が続き、2026年6月には25都道府県の出資者84名に約4億5,500万円、別の60名に約3億5,200万円の返還を命じる判決が出ています。ただし判決が出ても、運営会社に実際に支払う原資があるとは限らず、回収できるかどうかは別の問題として残ります。
「式」に当てはめると、崩壊した場所の違いがはっきりする
不動産投資の真実で書いた式は、家賃+売値-経費>買値。この式に当てはめると、2つの事件がどこで壊れたかがくっきり分かります。
かぼちゃの馬車は「家賃」の項が虚構でした。実際の入居率を反映しない、保証という名の約束だけが独り歩きしていた。式の左辺そのものが、最初から成立していなかったのです。
みんなで大家さんは「買値」に相当する資産評価が虚構だったと疑われています。
土地の実勢価格を大きく超える評価額で出資を集めていたとすれば、事業の土台そのものが最初から成立していなかった疑いが強いのです。
どちらも「利回りの高さ」という結果だけを見せられ、その裏付け(家賃の実態、資産の評価根拠)を投資家が検証できない構造になっていた点は共通しています。式のどの項が虚構だったかは違っても、「検証できない数字を信じた」という失敗の入口は同じです。
投資家が負うリスクの形が違う、という一番大事な話
ここが、冒頭で「正反対」と書いた核心です。
かぼちゃの馬車のオーナーは、融資を組んで物件を「所有」していました。だから破綻後も、物件と借金の両方が自分のものとして残ります。ローンが残ったまま家賃収入だけが消える、という最悪の組み合わせです。
みんなで大家さんの出資者は、物件を所有していません。借金を背負うことはありませんが、その代わり出資したお金そのものが戻ってくる保証もありません。判決で全額返還が認められても、運営会社に支払う体力がなければ、絵に描いた餅で終わる可能性があります。
「借金が残るか」「出資金が返ってこないか」。どちらも軽くはありませんが、自分がどちらの形でお金を出しているのかを知らずに投資すると、いざというときの対処がまったく変わってきます。
詐欺なのか、合法なのか、自己責任なのか
ここまで読んで、素朴な疑問が3つ浮かぶと思います。結局これは詐欺なのか。仕組みは違法だったのか。お金を払った側の自己責任なのか。
1つずつ、公表されている事実だけで整理します。
刑事事件としての「詐欺」は、両方とも立件されていません
かぼちゃの馬車では刑事告訴が検討されましたが、詐欺罪としての立件には至らず、2020年3月にスルガ銀行との民事調停という形で決着しています。みんなで大家さんについても、執筆時点(2026年8月)で刑事摘発の事実は確認できていません。今進んでいるのは、出資金の返還を求める民事訴訟と行政処分です。
どちらも共通する理由があります。詐欺罪の成立には「最初からだますつもりだった」という故意を立証する必要があり、そのハードルが非常に高いのです。運営側が「きちんと事業として説明していた」「結果的にうまくいかなかっただけ」と主張すれば、故意の立証は簡単ではありません。
仕組み自体は合法。問題は個別の行為です
サブリース契約も、不動産特定共同事業法にもとづく匿名組合出資も、それ自体は多くの健全な会社が使っている適法な仕組みです。制度そのものが違法だったわけではありません。
違法とされた、あるいは行政処分の対象になったのは個別の行為です。かぼちゃの馬車ではスルガ銀行側での融資書類・預金通帳の改ざんが問題視されました。みんなで大家さんでは、開発許可を得ていない土地をあたかも許可済みであるかのように書類に記載していたこと、投資判断に重要な事項の説明を怠っていたことが、2024年6月の行政処分の理由になっています。
自己責任か——「情報を検証できたか」で考える
ここが一番、意見が割れるところでしょう。私の考えを正直に書きます。
「自己責任」で片づけるには無理がある部分と、投資家側にも検証の余地があった部分の両方があります。
通帳の改ざんや、土地の実勢価格を大きく超える評価額は、一般の投資家が契約前に自分で見抜くことが構造的に難しい情報です。
2026年6月5日、大阪地裁は出資者側の返還請求権を認め、運営会社に支払い義務があると判断しました。これは「投資家側の落ち度」ではなく、契約と法律にもとづく返還義務として裁判所が認定したものです。すべてを自己責任と整理するのは、この判断とは整合しません。
一方で、「相場からかけ離れた高利回り」「保証の原資が説明できない」という違和感に、踏み込んで質問する余地はどちらの事件にもありました。「自己責任」という言葉は、運営側の説明責任をぼかすために使われることもあるので、鵜呑みにせず、自分で検証できる部分は検証する。それが、次の章で挙げる確認ポイントにつながります。
同じ失敗を避けるために、確認できること
- 利回りの根拠を、自分で追えるか。「保証されている」という言葉だけで、誰がその原資を負担しているか説明できないなら危険信号です
- 自分は所有者なのか、出資者なのか。融資を伴う「所有」なのか、匿名組合等の「出資」なのかで、背負うリスクの形が変わります
- 資産の評価根拠を確認できるか。土地や建物の評価額が、公示地価や近隣の取引事例と比べて著しく高くないか
- 新規募集が続く理由を考える。既存の支払いを新しい資金でまかなう構造になっていないか
不動産クラウドファンディングという少額出資の仕組み自体が悪いわけではありません。運営会社の情報開示や、劣後出資比率など投資家保護の設計がある商品も存在します。実際に不動産クラウドファンディング3社を比較した記事もあわせて読んでみてください。
よくある質問

- Qかぼちゃの馬車とみんなで大家さんは、同じ会社ですか?
- A
いいえ、別の会社です。かぼちゃの馬車は株式会社スマートデイズ、みんなで大家さんは都市綜研インベストファンド・みんなで大家さん販売(親会社は共生バンク)が運営していました。資本関係もありません。
- Qどちらも「詐欺」なのですか?
- A
本記事執筆時点で確認できているのは、行政処分(業務停止命令)と民事訴訟における返還命令の判決です。刑事事件としての「詐欺」の認定については、本記事では断定していません。事実として確認できる範囲(行政処分・判決・報道)のみを整理しています。
- Qみんなで大家さんは今も出資できますか?
- A
2024年6月の行政処分以降、新規の募集は行われていません。既存の出資者については、集団訴訟や個別訴訟を通じた出資金返還請求が進められている段階です(2026年8月時点)。最新の状況は公式発表や報道でご確認ください。
まとめ
かぼちゃの馬車とみんなで大家さんは、「利回りの裏付けを検証できないまま多額のお金が集まった」という失敗の入口は同じですが、法的な仕組みはまったく別物です。
融資で物件を「所有」するのか、出資という形で「所有しない」のか。この違いだけで、破綻したときに自分が背負うものがまったく変わります。次にどんな高利回り商品に出会っても、まず自分がどちらの形でお金を出そうとしているのかを確認することから始めてください。
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個別の仕組みの違いを踏まえて、判断基準となる一本の式に戻って確認しましょう。


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